研究実績の概要 |
Nlrp10は、腸管樹状細胞によるT細胞の活性化、B細胞による抗体産生能に重要な役割を果たす分子である。樹状細胞(CD11c)細胞特異的Nlrp10欠損マウスを作製したところ、高脂肪食負荷下において大腸でFoxp3およびIL-17発現が有意に低下し、腸管の炎症が悪化し耐糖能が悪化した。これらから樹状細胞Nlrp10がTreg, Th17細胞およびILC3細胞などの分化に重要な役割を果たす可能性が示唆された。今後、Nlrp10がTh17, ILC3細胞の分化の制御機構および、全身の糖・エネルギー代謝への影響について解析を進めていく。 Tリンパ球特異的Foxo1ノックアウトFoxo3ヘテロノックアウトマウス(T-QuarterKO; 以下T-QKOと称する) は高脂肪食負荷10週においてコントロールと比較して有意に体重増加が抑制され、耐糖能およびインスリン抵抗性が有意に改善した。T-QKOでは、高脂肪食負荷に伴う小腸の長さの短縮およびパイエル盤の萎縮が有意に改善する。T-QKOのパイエル盤において、Th2サイトカインの1つであるIL-4およびTregマーカーFoxp3の遺伝子発現がコントロールと比較して有意に増加していた。T-QKOでは、酸素消費量の増加による抗肥満の表現型を呈し、寒冷刺激下においてPgc1a遺伝子発現の有意の増加が褐色脂肪組織および皮下脂肪組織において認められた。また褐色脂肪組織では小腸パイエル盤同様、Th2サイトカインであるIL4およびIL13遺伝子発現の有意の増加が認められた。以上から、Tリンパ球におけるFoxoファミリーは、Th2リンパ球への分化または変換を抑制する作用があると考えられ、脂肪組織においてTh2サイトカインの発現を抑制することにより、Beige化を抑制し、最終的にエネルギー消費を抑制する作用があると考えられた。
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