【背景】SGLT2阻害薬は、腎近位尿細管に発現するSGLT2に選択的に作用し尿糖排泄を増加させ、血糖、体重などに好影響を及ぼすため、肥満2型糖尿病患者の治療で期待されている。本薬による尿糖排泄促進作用は長期間維持されるが、一方でエネルギー恒常性へ及ぼす影響は不明である。実臨床では本薬投与後に食欲が亢進する例もあり、エネルギー恒常性維持のための防御機構の存在を示唆する。【目的】(Study 1)本薬を慢性投与した際、グルコース体外排泄調節を担う「腎臓」と体内流入調節を担う「消化管」の間に、エネルギー恒常性維持機構として連関が有るか否かを検討する。(Study 2)本薬投与直後の消化管糖輸送の変化を検討する。本薬のSGLT選択性は濃度依存性であり、選択的SGLT2阻害薬といえど、薬剤が高濃度に存在する消化管ではSGLT1を介した糖輸送に影響する可能性がある。【方法】肥満糖尿病モデルマウスをSGLT2阻害薬Luseogliflozin(L)群とControl(C)群に分け、単回、慢性投与後の経口糖負荷試験(OGTT)の結果と消化管糖輸送能を比較検討した。慢性投与の場合、実験当日、薬剤は投与しない【結果】(Study 1)十二指腸や小腸上~下部の糖輸送はC群に比しL群で亢進し、SGLT1、GLUT2、GIP mRNA発現は、十二指腸~中部小腸においてL群で高く、Proglucagon mRNA発現は、全小腸においてL群で高かった。 OGTT時の血中GLP-1、GIP濃度はL群で高値であった。(Study 2)十二指腸での糖輸送はL群で低値、以降はL群で高値であった。OGTT時の血糖やインスリンは、尿糖排泄がC群に比し増加する以前より、L群ですでに低値であった。15分後の血中GIPはL群で低値、60~120分後はL群で高値であった。血中GLP-1は15分後以降、L群で高値であった。【まとめ】Luseogliflozinの単回、慢性投与はともに消化管糖輸送に影響する。また、エネルギー恒常性維持機構として、腎・消化管連関の存在が示唆される。
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