研究課題/領域番号 |
16K19549
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
横田 繁史 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, NIPSリサーチフェロー (50725281)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インスリン依存性糖尿病 / AMPK / 臓器関連間 / マイオカイン / IL-6 / myonectin |
研究実績の概要 |
これまでに、野生型(C57BL/6J)マウスにストレプトゾトシン(STZ)を投与すると骨格筋でAMPKが活性化することを見出した。骨格筋AMPKの役割を明らかにするために、骨格筋選択的にAMPK を抑制したDN-AMPK Tg マウスにSTZ を投与(STZ DN-AMPK Tg)したところ、血中インスリン濃度が低値なのにも関わらず、STZ 糖尿病による高脂肪酸血症、高ケトン体血症が正常化し、部分的ではあるものの高血糖も改善した。また、骨格筋および脂肪組織重量が増加し体重減少が抑制された。 そこで、STZ DN-AMPK Tg マウスの脂肪組織重量の改善メカニズムを調べるため、parabiosis(双体結合)した野生型マウスとDN-AMPK Tgマウスの腹腔内にSTZを投与し糖尿病を発症させたところ、野生型同士をparabiosisしたマウスによる高血糖や高脂肪酸血症などの代謝異常が改善した。骨格筋から分泌するIL-6は、STZ糖尿病マウスの骨格筋のタンパク質発現および血中濃度がいずれも上昇し、DN-AMPKマウスでは低下した。さらに、新たなマイオカインとして、骨格筋から分泌され肝臓や脂肪組織に作用し、脂肪酸の取込みを促進するmyonectinについて検討したところ、STZ糖尿病マウスで血中濃度が低下し、DN-AMPKマウスでは上昇していた。このように、私は、骨格筋AMPKの活性化が、IL-6やmyonectinといったマイオカインの分泌を介して、STZ糖尿病の代謝異常に重要な役割をしている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
双体結合(Parabiosis)マウスの作成および各中和抗体あるいはタンパク質の浸透圧ポンプを使った慢性的な投与実験における実験条件の確立に手間取ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、糖尿病におけるmyonectinの効果を調べるために、STZ糖尿病マウスにmyonectinを補充する実験、逆に、STZ DN-AMPK Tgマウスにmyonectinの中和抗体を投与する実験を行う。予備実験では、STZ糖尿病マウスにmyonectinを補充したところ、糖尿病による代謝異常が改善し、逆に、STZ DN-AMPK Tgマウスにmyonectinの中和抗体を投与したところ、代謝は悪化した。 DN-AMPK Tg マウスにおいてどの組織においてグルコース及び脂肪酸の利用が改善したかを明らかにするため、RIラベルした2-deoxyglucose (2DG)を投与し、各組織におけるグルコース取込み速度を測定する。また、脂肪酸の利用がどの組織で行われているかを確かめるために、RI ラベルしたbromopalmitate(BP)をこれらのマウスに投与し、各組織における脂肪酸取込み速度を測定する。 さらに、インスリンについて検討する。インスリンはAMPK 活性を抑制する。STZ 糖尿病においてインスリンによる代謝改善効果の一つは、STZ 糖尿病の骨格筋においてAMPK が異常に活性化することを防ぐことにあると考えられる。AMPK が活性化する結果、mTOR 活性が抑制され、蛋白合成が抑制される為、治療に必要なインスリン量も増加する。実際に、グルコース負荷試験を行うと、STZ DN-AMPK Tg マウスでは有意に改善していることから、AMPK シグナルを抑制したマウスでは少量のインスリン投与で血糖値も正常化する可能性がある。そこで、STZ DN-AMPK Tgマウス、STZ 糖尿病マウスにIL-6 の中和抗体あるいはマイオネクチンを浸透圧ポンプで投与した時に、血糖値を長期的に正常化するために必要なインスリン投与量を調べる。
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