研究実績の概要 |
これまでの研究において、CYP11B2遺伝子座にGFPを組み込んだBACを組み込んだTgマウス(CYP11B2-GFP Tgマウス)を4系統作出した。その内の1系統は、内在性CYP11B2 mRNAと同様に、副腎においてのみGFP mRNAの発現が見いだされた。本研究では、このTgマウスの副腎から球状層細胞の単離を目指したが、抗GFP抗体を用いた免疫蛍光染色法を用いても球状層細胞特異的なGFPシグナルは得られなかった。 そこで、CYP11B2-GFP発現量を上昇させる条件を模索し、CYP11B2-GFPつくば高血圧マウスの作出を目指した。つくば高血圧マウスは雌レニンTgマウスと雄アンジオテンシノーゲンTgマウスを掛け合わせたダブルTgマウスであるが、本研究では、CYP11B2-GFPつくば高血圧マウス(CYP11B2-GFP+/-, レニン+/-, アンジオテンシノーゲン+/-)を作出し、コントロール群(CYP11B2-GFP+/-, レニン-/-, アンジオテンシノーゲン-/-)との副腎におけるGFP mRNA発現量の比較を行った結果、予想に反し、GFP mRNAの発現量に変化は見られなかった。これらの結果から、上述のBACに含まれる領域はCYP11B2遺伝子の副腎特異性を規定するには十分であるが、アンジオテンシンII応答には不十分であることを示唆している。これまでCYP11B2のアンジオテンシンII応答性に関する研究は、培養細胞を用いた実験から転写開始点近傍のプロモーター領域が主要な役割を担っていることが報告されてきた。しかしながら、今回の研究結果から、マウス個体レベルでのCYP11B2遺伝子の発現制御はより広範な制御領域を必要とする可能性が新たに考えられた。
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