研究課題
本研究では、多発性内分泌腫瘍症1型の新規疾患原因遺伝子変異候補として、研究代表者が発見したCDK2遺伝子M196T変異、CDK3遺伝子R122W変異、P204S変異が実際に疾患の原因となりうるかを明らかとすることを目的とした。結果、CDK2遺伝子は、野生型、M196T変異ともにMIN6細胞を用いた安定細胞発現株を樹立し、細胞増殖能を検討したが、野生型、変異型で有意な差は認めなかった。さらに、CDK2下流シグナルであるRbのリン酸化、細胞周期解析でも差はなく、M196T変異の腫瘍発症への関与は低いと考えた。CDK3遺伝子に関しては、変異型であるR122W変異、P204S変異、また疾患原因遺伝子ではないことが判明しているN72Delについて、安定発現細胞株を樹立したが、野生型は、細胞株の樹立が困難であった。ベクターの再作成、再導入を行ったが、何らかの理由で細胞から排除されている可能性が考えられた。野生型との比較が、本研究の最も重要な点であり、この過程に多くの資源の投入が必要となった。野生型の樹立が困難であったため、遺伝子導入を行っていないMIN6細胞、N72Del安定発現細胞株をコントロールとして、細胞増殖能並びに細胞周期解析を検討し、R122W安定発現細胞株は、有意な差は認めなかったが、CDK3P204S変異安定発現細胞株は細胞周期が活性化された状態にあり、CDK3P204Sは細胞増殖能を増加させ、腫瘍発症に関与している可能性を明らかとし、多発性内分泌腫瘍症1型の発症原因の解明に寄与したと考えられる。しかし、CDK3野生型安定発現細胞株の樹立が困難であり、CDK3P204S変異と野生型の比較ができなかったため、トランスジェニックマウスの作成まで至らず、CDK3遺伝子野生型安定発現細胞株の樹立と、モデルマウスでの検討など今後さらなる研究の継続が必要である。
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最新医学
巻: 72 ページ: 1424-1431
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
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10.1210/jc.2016-2261.