研究課題/領域番号 |
16K19552
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩間 信太郎 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (00733536)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 内分泌障害 / 免疫関連有害事象 / 抗CTLA-4抗体 / 抗PD-1抗体 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体)は、有効な抗腫瘍効果の一方、下垂体炎を含む免疫関連副作用を発症させることが大きな問題となっている。我々は免疫チェックポイント阻害剤の一つである抗CTLA-4 抗体による下垂体炎マウスモデルを開発し、本薬剤による内分泌副作用の研究を行ってきた。 本研究では、免疫チェックポイント阻害剤の副作用である内分泌障害の病態の解明と診断法の開発を目指し、これまでに作成した抗CTLA-4 抗体誘発性下垂体炎マウスモデルの病態解析、および新規マウスモデルの開発を行っている。 現在我々は、これまでとは別の免疫チェックポイント阻害抗体を用いて、内分泌副作用と類似した病理組織像を呈する新たな動物モデルの作成に成功しており、病態の解析を行っている。すなわち、新たな免疫チェックポイント阻害抗体の投与により特定の内分泌臓器に炎症細胞浸潤を発症するマウスモデルの作成に成功した。内分泌臓器に浸潤した炎症細胞の特徴を明らかにするために、免疫組織化学的解析を行い、多数のCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、およびCD11b陽性マクロファージの浸潤が認めれらることが明らかとなった。 また、本研究では、臨床において抗CTLA-4 抗体または抗PD-1 抗体で治療される患者の血清および臨床データの解析から、ヒトにおける早期診断法を開発し、正確な副作用発症頻度と臨床像を明らかにすることも目的としている。これまでに、抗CTLA-4抗体による下垂体障害、抗PD-1抗体による甲状腺障害、抗PD-1抗体による1型糖尿病の発症例を経験しており、それぞれの症例から血液サンプルを採取できた。したがって、今後これらの検体を用いた解析を進めることができる状態にある。 以上の通り、本研究は動物実験を用いた基礎的部分および臨床検体の収集において順調に進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、免疫チェックポイント阻害剤に伴う副作用である内分泌障害のメカニズムを解明するために、動物モデルを新たに作成することを目指している。 これまでに我々は、マウスに抗CTLA-4 抗体を連続投与することで下垂体炎を発症させることに成功していた。本モデルにおいて我々は、投与された抗CTLA-4 抗体が下垂体のTSH およびPRL 産生細胞に発現するCTLA-4 に直接結合することで下垂体にⅡ型アレルギー反応が生じ、初期の炎症が誘発されることを示した。さらに、その後に下垂体に対する自己免疫反応が生じることを示した。 現在我々は、これまでとは別の免疫チェックポイント阻害抗体を用いて、新たな動物モデルの作成に成功しており、病態の解析を行っている。具体的には、炎症が生じた内分泌臓器における免疫組織学的解析により浸潤した炎症細胞を評価したり、臓器から抽出した炎症細胞についてフローサイトメトリーを用いて免疫学的解析を行っている。 また、本研究では、臨床において抗CTLA-4 抗体のイピリムマブまたは抗PD-1 抗体のニボルマブまたはペムブロリズマブで治療される患者の血清および臨床データの解析から、ヒトにおける内分泌障害の早期診断法を開発し、正確な副作用発症頻度と臨床像を明らかにすることも目的としているが、これまでに順調に患者サンプルが蓄積されており、今後の解析を進めることができる状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに我々が作成した抗CTLA-4 抗体誘発下垂体炎マウスモデルの作成法を参考に、これまでとは異なる免疫チェックポイント阻害抗体による内分泌副作用も出るマウスを開発した。今後は、このモデルマウスを用いて、病態の解析を進める。 具体的には、炎症が生じた臓器における病理組織学的解析や、炎症が生じた臓器から炎症細胞を抽出して免疫学的解析を行う。 また、実臨床から得られている患者血液検体を用いた解析により、副作用のバイオマーカーについて検討を行う。具体的には、蛍光抗体法により炎症臓器特異的自己抗体の解析、マウスモデルから候補としてあげられた自己抗原蛋白に対する自己抗体の診断的有用性の検討などを行う。 以上の基礎的検討と臨床検体を用いた解析の結果から、免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害のバイオマーカー開発および病態解明を目指す。
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