本研究は、肥満減量手術モデルラット(RYGBラット)を確立して、減量手術における体重減少、糖代謝改善に寄与する内分泌的メカニズムの解明を主たる目的とする。 本年度は昨年度に記載した研究方策に従い、膵β細胞株を用いたカルシウムアッセイ系を活性評価に使用して、消化管組織抽出物から生理活性物質の探索を進めた。それまでの研究において、RYGBラットはグルコース応答性のインスリン分泌が著しく亢進しており、それには消化管由来の因子が関与していることが強く示唆されている。そこでこの、RYGBラットのグルコース応答性インスリン分泌の亢進に関与する因子の精製を試みた。具体的には、RYGBラット由来の組織抽出物とShamラット由来の組織抽出物の生理活性を比較し、RYGBラットにおいて特異的に増加、あるいは減少している活性画分に着目して精製・探索を進めた。 本研究ではRYGBラットおよびShamラットの消化管を部位ごとに採取し、ペプチド画分を含む組織抽出物を作製した。両群から得られた組織抽出物をゲル濾過HPLCでそれぞれ展開後、カルシウムアッセイ系を用いて活性を評価したところ、複数の興味深い活性画分を見出すことができた。特に、分子量約3000以下の物質が含まれる画分では、RYGBラット由来の組織抽出物の方が強い活性を示した。これらの活性画分を、様々な種類のイオン交換カラム、逆相カラムを用いて精製を進めたところ、既知の生理活性ペプチドの断片が検出された。しかしながら、このペプチド断片が、RYGBラットのグルコース応答性のインスリン分泌の亢進に関与しているのか否か明らかにできていない。今後、このペプチド断片の含有量やインスリン分泌における生理活性の有無などを明らかにし、その機能を同定することが重要である。
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