ミトコンドリアは(Mt)は細胞内の代謝状態や様々な細胞外シグナルをセンスし、融合と分裂のバランスを変容させ、動的にその構造を変化させている。ミトコンドリア分裂を制御するDynamin-related protein 1 (Drp1) の肝細胞特異的欠損マウス(Drp1LiKO)の解析から、肝臓でのMt分裂の障害が、ERストレスを介してFgf21の産生と分泌を亢進させ、高脂肪食負荷時の全身のインスリン抵抗性を改善させることを明らかにした。一方、全身での表現型とは対照的に、肝組織では炎症性マーカーの発現増加、肝細胞死、肝繊維化などの所見を認めた。今回我々は、Mt分裂の炎症機構における役割を明らかにするため、リポポリサッカライド(LPS)を野生型及びDrp1LiKOマウスに腹腔内投与し(In vivo)、また、野生型及びDrp1LiKOマウスの初代培養肝細胞の培養液中に添加し(In vitro)、それぞれ血中及び培養上清中のLPS刺激による炎症性サイトカインの産生を調べた。その結果、Drp1LiKOマウスおよび初代培養肝細胞では炎症性サイトカインの産生が著明に亢進していた。さらにDrp1LiKO肝細胞においてオートファージの低下、活性酸素(ROS)の産生亢進が炎症性サイトカインの産生増加に関与することを明らかにした。すなわち、Mtダイナミクスは、肝臓における脂質代謝と炎症を制御する共通の分子基盤である。
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