研究課題
AT1受容体結合低分子蛋白(ATRAP)は、組織レニン-アンジオテンシン系の過剰活性化に拮抗する内在性抑制分子である。本研究は、メタボリック症候群の基盤となる肥満症・インスリン抵抗性におけるATRAPの病態生理学的意義の解明を目的として行われた。5.4-kb Adiponectinプロモーターにて作成したATRAP高発現マウス(TG)は、コントロールマウス(WT)と比較して内臓脂肪で約10倍、骨格筋で約1.5倍のATRAP高発現を認めた。10週間の高脂肪食負荷(HFD)と2週間の低用量AngII負荷(100 ng/kg/min)を行い、体重増加、内臓脂肪量、脂肪細胞サイズの評価、および糖負荷試験、インスリン負荷試験によるインスリン抵抗性の評価を行った。通常飼育下ではTGとWTの表現型は同等であった。しかし、HDFにおいて、TGでは体重、内臓脂肪量および細胞面積の増大が抑制され、インスリン抵抗性が改善した。TGの脂肪組織では炎症性アディポカインおよびNADPH oxidaseの発現抑制と炎症細胞の浸潤抑制を認めるとともに、GLUT4の発現維持とp38-MAPKの発現抑制を認めた。一方、低用量AngII負荷では、体重推移に変化はなかったが、WTと比較してTGではインスリン抵抗性の増悪が抑制された。WTとTGの内臓脂肪の表現型に明らかな変化を認めなかったが、TGの骨格筋ではNADPH oxidaseの発現抑制とともに、GLUT4の発現維持とp38-MAPKの発現抑制を認めた。以上より、HFD負荷では白色脂肪組織の炎症惹起とAT1受容体系の過剰活性化によりインスリン抵抗性を惹起し、低用量AngII負荷では骨格筋のAT1受容体系の過剰活性化から酸化ストレスを増大させインスリン抵抗性を惹起すること、そして組織ATRAP高発現によりこれらの病態が改善する可能性が示された。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (4件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2846
10.1038/s41598-018-21270-8
International Journal of Molecular Sciences
巻: 18 ページ: 676
10.3390/ijms18030676
http://www.yokohama-medicine.org/news/