研究課題
研究代表者の施設で展開している前向きコホート研究(Hyogo Sleep Cardio Autonomic Atherosclerosis Study: HSCAA研究)に登録された患者のうち、甲状腺疾患を有しない314名の患者を対象として、血中マクロTSHと睡眠状況との関連を検討した。さらにマクロTSH及びフリーTSHの分泌様式及び構造変化の比較検討を行った。その結果、TSH値が正常範囲にあるにも関わらず、ほとんどすべての患者のTSHの60-90%が血清蛋白と結合したマクロTSHとして存在していた。さらにマクロTSHの高値は睡眠状況の悪化と有意に関連していた。また、マクロTSHの高い群では肥満や糖尿病、脂質異常症の罹患率が有意に高かった。マクロTSHの分泌様式並びに構造解析の検討では、ゲル濾過法によって血清TSHはマクロTSH及びフリーTSHの2分画に分離されたが、ポリアクリルアミド電気泳動ではマクロTSHとフリーTSHの間に蛋白構造の違いを認めなかった。しかし、レクチンクロマトグラフィーを用いた糖鎖構造解析において、マクロTSHはレクチンカラムに非結合のTSHの割合が多く、一方、フリーTSHはカラムへ結合したTSHの割合が高かった。このことからマクロTSHはフリーTSHとは糖鎖構造の異なったTSHが免疫グロブリンと結合した状態であることが示された。さらに、分泌様式においても、両TSHはTRHに対する反応は同様であるにも関わらず、日内変動では全く逆の変動をとることがわかった。すなわち、フリーTSHは日中から夜間にかけて上昇するのに対し、マクロTSHは逆に低下しており、このことからマクロTSHはTRHのみならず、日内の特に時間軸を基盤とした制御を受けている可能性が示唆され、睡眠障害のマーカーとして今後活用できる可能性を示すことができた。
すべて 2017
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Sientific Reports
巻: 7 ページ: 1-7
10.1038/srep44387