研究実績の概要 |
MEN1(多発性内分泌腫瘍症1型)の発症に寄与する新たなMEN1遺伝子のvariant「IVS5+1G>T」を同定した。このvariantはスプライス異常をきたすことが予想されたが、腫瘍組織から得られたcDNAを鋳型としたRT-PCRの解析によって確認された。MEN1によって生じる多臓器の腫瘍性病変に対して、MEN1遺伝子のコピー数解析をMLPA法にて行ったが、ヘテロ接合性の消失(LOH)は全ての腫瘍で確認されたが欠失の範囲は必ずしも全ての腫瘍で一致していないことを明らかにした。また癌抑制遺伝子53遺伝子について包括的にゲノムコピー数解析およびメチル化解析をMLPA法およびMS-MLPA法にて解析を行なった。解析した全ての腫瘍で共通するゲノムコピー数異常をVHL, GSTP1, CHFR, BRCA1において認めたが各腫瘍で一致しないゲノムコピー数異常も多数認められた。またCASP8遺伝子の過剰メチル化を全ての腫瘍において同定した。これらの結果はMEN1における腫瘍発生におけるsomaticなalterationの機構解明に有益である。更に末梢血と複数の腫瘍組織におけるgenomic DNAの全エクソーム解析の比較検討により各腫瘍における体細胞variantを網羅的に解析しMEN1関連腫瘍において共通して認められた機能に影響を及ぼす可能性のあるvariantが複数同定されMEN1における腫瘍発生機序の解明に繋がることが期待される。
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