Runx1Δ/Δ (Runx1flox/flox×Mx1-Cre)マウス、Asxl1G643fsマウスの造血細胞を、Ly5.1マウスの正常造血細胞と混合した上で野生型およびadipo-nullマウスに移植して、正常細胞と前白血病クローンが混在し、前白血病性クローンが増殖優位性を獲得するようなモデルの作製を試みた。ヒトにおいては非常に長期間を要する前白血病クローンの拡大過程を、マウスを使って短期間に観察可能なモデルを作るために、前白血病クローンの増殖優位性を誘導するような様々な遺伝毒性ストレスを与えたが、前白血病性クローンの優位な増殖は見られなかった。治療関連白血病の発症に関連するような、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤などの薬剤も用いて、遺伝毒性ストレスを与えたが、前白血病クローンの増大は見られなかった。p53-nullマウスの造血細胞を正常造血細胞と混合して移植実験を行ったが、p53-null細胞の増殖は見られなかったので、遺伝毒性ストレスを与えることで前白血病モデルの確立を目指している。 前白血病モデルの作製と平行して、遺伝毒性ストレスが加わった時のadiponectinの動態、および造血細胞に対する影響に関する解析を行った。Adiponectinは定常状態では骨髄脂肪細胞から分泌されて作用しているが、遺伝毒性ストレスが加わることによって全身循環から骨髄への移行性が亢進し、骨髄局所のadiponectin濃度が上昇することによって、造血細胞に対するadiponectinの作用が高まることを明らかにした。また遺伝毒性ストレスが加わった時に、adiponectinが正常造血幹細胞のAKT-mTOR経路を活性化することによって、quiescentな造血幹細胞の活性化を促進することを明らかにした。今後は前白血病性造血幹細胞と正常造血幹細胞の応答の差異を明らかにしていく。
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