研究課題/領域番号 |
16K19568
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮内 将 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40772801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 薬剤耐性 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本年度においては研究計画に基づき、第一にin vitroでのADAM8によるイマチニブ耐性化機序の解明を進めた。当初の予定通り、急性期慢性骨髄性白血病細胞株に遺伝子導入しADAM8安定発現株を樹立した。しかしながら、慢性骨髄性白血病細胞ADAM8安定発現細胞株では、イマチニブ感受性及びBCR/ABLの下流のシグナルのリン酸化に変化は認められなかった。一方で、CML-iPSC由来pre-HPCs(慢性期慢性骨髄性白血病:CML-CP幹・前駆細胞モデル)においては予想通りADAM8陽性細胞がイマチニブ耐性を示すことを見出した。これらの結果、ADAM8はCML-CPの幹・前駆細胞分画でイマチニブ耐性化に寄与している可能性が示唆されたため、CML-CP患者の初発時骨髄検体のうちCD34陽性幹・前駆細胞分画を用いて評価したところADAM8陽性細胞がイマチニブ耐性を示すことを明らかとした。同時に、ADAM8の発現が正常の骨髄細胞及び他の造血腫瘍患者の細胞と比較してCMLに特異的であることを見出した。 CML-CP患者検体において上述の知見を得たため、CML-CP患者検体を用いてin vivoにおけるADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与を当初の予定より早期に評価した。その結果、チロシンキナーゼ阻害剤を内服し良好な治療効果が得られているCML-CP患者の骨髄検体においても、ADAM8陽性分画では高頻度にCML細胞が残存していることを明らかとした。これらの結果により、ADAM8が残存CML細胞を評価する有効なバイオマーカーであることが示されると同時に、CML患者の再発予後予測及び根治のための新規治療標的となりうる可能性が示唆された。 この結果をもとに、2017年2月15日に特許出願を行った。民間企業一社と秘密保持契約を締結済みであり、共同研究について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの進捗は当初の計画以上に進展していると考えられる。 その理由として第一に、当初の研究計画通りin vitroにおけるADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与を明らかとした上で、H29年度に予定していたin vivoにおけるADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与することを、より直接的な患者検体を用いて行いて明らかにできた点である。さらに、これらの知見をもとに特許出願を行い、民間企業と秘密保持契約を締結し共同研究の検討を進めることができた点も当初の計画以上の進捗と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度にCML-CP患者骨髄幹・前駆細胞分画におけるADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与が明らかとなったため、H29年度は患者検体を用いての解析を第一に進める。具体的には、幹・前駆細胞分画のうちどの分画においてADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与が大きいかを評価する。さらに、CML-CP患者検体ADAM8陽性細胞のイマチニブ耐性における分子生物学的機構を明らかにするため、CML-CP患者検体を用いてBCR/ABLの発現及びBCR/ABLの下流のシグナルを評価する。 同時に、in vivoにおけるADAM8のイマチニブ耐性に対する寄与をより明らかにするためマウスモデルを用いた解析を進める。具体的には、当初の研究計画通りBCR/ABLを採取したマウス骨髄細胞に遺伝子導入し骨髄移植を行うマウスCML骨髄移植モデルを使用し、イマチニブ投与下におけるADAM8陽性細胞のイマチニブ耐性を評価する。CML骨髄移植モデルにおいてADAM8陽性細胞のイマチニブ耐性が明らかとなった場合には、ADAM8ノックアウトマウスを用いてin vivoにおけるADAM8によるイマチニブ耐性の分子生物学的な機構を明らかとする。
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