研究課題
ヒト末梢血を用いて、同種造血細胞移植症例と健常者におけるMAIT細胞(CD3+TCRγδ-CD161+TCR Vα7.2Jα33+)の割合をフローサイトメトリーを用いて評価した。経時的に、同種造血細胞移植後1、3、6、9、12か月、および移植後数年以上の複数の時点で評価した。非移植症例と比較して、同種移植後1年以上経過した臍帯血移植症例、血縁者間骨髄移植症例及び非血縁者間骨髄移植ともに、有意に末梢血MAIT細胞の割合が低いことが確認された。免疫抑制剤の投与は、末梢血MAIT細胞の割合に対して影響しなかった。これらの結果から、同種造血細胞移植後には末梢血MAIT細胞の免疫再構築は遷延することが確認された。次に、ヒト多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病や潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患では共通して末梢血でのMAIT細胞が減少しているが、関節リウマチの関節液や炎症性腸疾患の大腸組織ではMAIT細胞が増加していることから、MAIT細胞は自己免疫疾患において炎症局所の病態形成の主要な役割を担っていると考えられていることから、同種造血細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)におけるMAIT細胞の役割を明らかにするために、慢性GVHDの発症と末梢血MAIT細胞の割合を調べた。慢性GVHDの発症やNIHによる重症度と末梢血MAIT細胞の割合に関連は認められなかった。しかしながら、MAIT細胞の活性化の指標であるいくつかの表面マーカーが上昇していたことから、MAIT細胞の活性化が慢性GVHDに重要な役割があることが示唆されていることから、さらなる解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
計画通り研究が進展している。
同種造血細胞移植後の免疫不全やGVHDにおけるMAIT細胞の役割を明らかにするために、種々の刺激による各種サイトカイン産生能などMAIT細胞の機能解析を、同種造血細胞移植後の時期やGVHD発症の有無になどで相違点があるかについて解析を行う予定である。また、GVHDの組織検体を用いて、GVHDにおける標的臓器でのMAIT細胞の集積などを明らかにすることで、病態局所でのMAIT細胞の役割について検証する。将来的にGVHDや同種移植後免疫不全に対する新規治療標的の開発への発展性も期待されると考えられる。
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