研究課題
血小板活性化受容体CLEC-2とそのリガンドPdpnの結合は血小板内においてSyk等下流のシグナル伝達分子のリン酸化を誘導して血小板を活性化させる。我々の先行研究によってCLEC-2欠損に加え、PdpnやSykの欠損によって肺胞myofibroblast及びその起源である肺中皮細胞の分化異常が起こり、結果として肺胞形成異常及び出生後致死となることを見出した。本研究ではCLEC-2とPdpnの結合によって活性化された血小板から放出された顆粒内容が肺胞形成に関与しているという仮説を立て、平成29年度は以下の2点について検証した。1.血小板顆粒内容の肺胞myofibroblast分化促進効果胎生16.5日の肺についてorgan culture法を実施したが、肺葉全体の培養は困難であった。肺中皮を含む肺葉表層を1 mm3程度に細分化した組織片を培養することで肺胞形成が観察できたため、この方法で血小板顆粒内容の効果を検証した。肺葉組織片を血小板顆粒内容抽出液添加及び非添加の培養液で培養したところ、血小板顆粒内容には肺胞myofibroblastの分化の指標であるalpha-SMAの発現を肺胞間質で誘導する効果があることが判明した。2.CLEC-2と結合するPdpn発現細胞の同定胎生期肺においてPdpnは肺胞上皮、肺中皮、リンパ管内皮に発現していることを確認している。国内の共同研究者から3種の組織特異的Cre発現マウス、海外機関からPdpn floxの凍結精子を導入して3種の組織特異的Pdpn欠損マウス樹立に成功した。詳細な解析は現在進行中であるが、3種の組織特異的Pdpn欠損マウスの中で出生後に高率で死亡するマウスを見出した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた肺葉全体を培養するorgan culture法では解析が難しかったが、肺葉表面を細分化した組織片を培養することで肺胞形成を評価することが可能となった。また、組織内に残存した血小板を除くため肺葉摘出前に心臓からPBSを灌流して脱血するなど工夫することで添加する血小板顆粒内容の評価を正しく検証することに成功した。結果として血小板顆粒内容に肺胞myofibroblastの分化を促進する効果があることを見出した。組織特異的Pdpn欠損マウスについては、全3種のCreマウスやPdpn flox精子の導入及び交配による組織特異的Pdpn欠損マウスの作製まで実施した。その中でCLEC-2欠損と同様出生後致死となる系統が存在することを検証数は少ないものの確認でき、当初の予定通り進んでいる。
血小板顆粒内容には様々なサイトカインが多量に含まれている。肺胞myofibroblastの分化促進効果を持つサイトカインの同定を進める予定である。また、組織特異的Pdpn欠損マウスについてはCLEC-2欠損マウスで実施している肺発生の組織学的解析を実施する予定である。
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