血小板活性化受容体CLEC-2の全身欠損マウスが出生直後に死亡することを端緒にCLEC-2欠損マウスの肺発生を詳細に調査し、後期肺発生での肺嚢形成、弾性線維形成に必須なmyofibroblastという間質細胞の欠損を認めた。その異常は、1.血小板特異的CLEC-2欠損マウス、2.抗血小板抗体投与による血小板減少マウス、3.Syk(CLEC-2依存性血小板活性化を仲介する血小板内分子)欠損マウス、4.TGF-beta中和抗体投与マウス、5.リンパ管内皮特異的podoplanin(CLEC-2リガンド)欠損マウス等でも認められた。以上の結果から、血小板CLEC-2とリンパ管内皮podoplaninの相互作用が血小板を活性化し、血小板から放出されたTGF-betaが肺間質のmyofibroblastの分化を誘導することで正常な肺発生が起こると考えられた。最終年度にはCLEC-2欠損胎仔胸腔に血小板顆粒内容やTGF-beta等を投与して肺発生を正常化できるか検討したが、胎仔の妊娠中の死亡率が高かったため実験的な問題があると思われた。一般的にin utero injectionは胎生10日前後までに行われるが、本研究では胎生16日とかなり胎仔が成長しており、十分胸腔に達するくらい刺入するのに太いガラスキャピラリを用いる必要があった。それが胎仔に対して大きなダメージになってしまった可能性がある。 血小板CLEC-2による肺発生機構の研究結果については米Blood誌に掲載された。
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