研究課題/領域番号 |
16K19576
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
美山 貴彦 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (00770330)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウイルス・癌抗原特異的T細胞 / T細胞レセプター |
研究実績の概要 |
ヒトの獲得免疫応答の主役を担うT細胞はT細胞受容体(TCR)の遺伝子再構成により膨大なる多様性を獲得し病原体や腫瘍の発生および進展に対する抑制的な機能を発揮している。本研究では、次世代シークエンサー(NGS)を用いたハイスループット解析技術によりウイルおよび腫瘍抗原を認識するTCR遺伝子配列の網羅的・定量的解析と特異性・機能解析を同時に行い、TCR遺伝子導入T細胞を用いた養子免疫T細胞療法を開発するための基礎的知見を得ることを目的とする。 本年度は、健常者の検体を用いて末梢血中に循環しているウイルス・腫瘍抗原を特異的に認識するT細胞の検出とそれらに発現している抗原を特異的に認識するT細胞レセプター(TCR)のレパトワ解析を行った。まず、ウイルス抗原特異的T細胞の解析をするためにサイトメガロウイルス(CMV)、Epstein-Barrウイルス(EBV)既感染者から採取したリンパ球をCMVpp65抗原由来のペプチド(NLV, QYD)、EBV BRLF1抗原由来のペプチド(TYP)を用いて試験管内で感作させ反応したリンパ球を、それぞれの抗原に対するMHC/ペプチド四量体を用いて染色し、フローサイトメトリーを用いて検出および分離しTCR遺伝子配列をもとにそのレパトワ解析を行い、さらに単一細胞分離技術により個々のT細胞のTCRα鎖とβ鎖のペア遺伝子配列の同定し、TCR欠損T細胞株に遺伝子を導入することによりTCRと抗原ペプチドとの結合能の検証を行った。これらのウイルス抗原を特異的に認識するT細胞のレパトワは偏在傾向を示しており、特にCMVpp65-NLV抗原に反応するT細胞においてはそのT細胞レパトワの偏在性はTCR-ペプチド間の結合力に強い相関性を認めており、これは抗原刺激によるT細胞クローンの選択的増幅にはTCRと抗原ペプチドとの結合能が重要であることが示していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者5人の末梢血検体を用いてウイルス抗原(CMVpp65、EBV BRLF1)を特異的に認識するTリンパ球集団を同定し、それらに発現しているTCRのα鎖β鎖ペア遺伝子配列を同定し、TCRレパトワ解析およびそれらの抗原特異性の検証を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次に腫瘍抗原を特異的に認識するTCRの解析を行うためにウイルス抗原特異的TCRの解析法と同様に、NY-ESO-1、WT-1、MART-1などの腫瘍抗原由来のペプチドを用いてリンパ球を感作増幅させ、それらに反応したT細胞をMHC/四量体ペプチド染色とフローソーティング技術を用いて分離しTCR遺伝子配列の取得およびその機能解析を行う。抗原ペプチドを特異的に認識し、その結合力が高いTCRに関しては臨床応用に用いることができる可能性があるため、ヒト末梢血T細胞にそれらTCR遺伝子を導入し、抗原特異性、増殖性、細胞傷害活性を発揮できるかの検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における検体量の測定のために高感度測定を可能とする超微量分光光度の購入を検討していたが本機に関しては学内の共同使用機を利用することにより購入を断念し、消耗品となる実験試薬および器具の購入のみとなっため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の使用計画は消耗品となる実験試薬の購入、国内旅費(国内学会研究成果発表)、外国旅費(国際学会研究成果発表)、論文英文校正・投稿費用を計上した。
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