我々は、まず最初に効果的な白血病特異的T細胞療法の確立を試みた。日本人に最も多いHLAアリルであるHLA-A24陽性白血病細胞を選択的に認識できるWilms tumor 1 (WT1)特異的細胞傷害性T細胞クローン由来T細胞レセプター (TCR)遺伝子 (A24/WT1-TCR)を単離した。タカラバイオ株式会社が開発した、内在性TCRを抑制することで遺伝子導入するTCRの発現を安全に高めることができるsiTCRレトロウイルスベクターにA24/WT1-TCRを組み込み、末梢血T細胞に遺伝子導入した。その結果、A24/WT1-TCR遺伝子導入T細胞 (A24/WT1-TCR-T細胞)は、in vitroおよびin vivoの実験系において、A24/WT1陽性白血病細胞を選択的に傷害した。さらに、標的親和性と安全性とを高めた新規A24/WT1-TCR遺伝子の同定にも成功し、これらのTCR遺伝子を導入したT細胞がA24/WT1陽性白血病細胞をより効率よく認識できる可能性を示した。 次に、抗白血病効果の増強を目的として、A24/WT1-TCR-T細胞療法と免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の可能性を検討した。白血病細胞におけるPD-L1の発現をフローサイトメトリー法で検討したところ、一部の細胞においてはPD-L1の発現がみられなかった。しかしながら、IFN-γ存在下によってこのような細胞がPD-L1の発現を獲得することを見出した。加えて、A24/WT1-TCR-T細胞 (活性化T細胞)がPD1分子を高発現していることも明らかとした。以上より、白血病細胞と遺伝子導入T細胞との間にはPD-L1/PD1 axisが存在することを明らかとした。従って、免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、白血病特異的T細胞療法の治療効果をさらに高めることができる可能性が示された。
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