研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(MM)患者の骨髄サンプルを用いたDNAマイクロアレイ法を行い、CD138陽性MM細胞でGas6高発現を見出した。MM患者の血清Gas6濃度をELISA法にて検討し、健常人に比べMM患者の血清Gas6濃度は高値であった。MM細胞株RPMI-8226及びAMO-1においt、Gas6発現をフローサイトメトリー法で検討し、MM細胞株もまたGas6を高発現した。MM細胞の病態・進展には骨髄微少環境が重要である。そこで、ヒト培養骨髄間質細胞株HS-5のGas6発現、細胞増殖に関与するサイカインIL-6発現をELISA法で検討し、HS-5はGas6及びIL-6を有意に分泌することがわかった。次に、MM細胞のアポトーシス及び細胞増殖におけるGas6の役割を検討した。MM細胞株にGas6及びHS-5培養上清を添加したところ、MM細胞株のアポトーシス抑制と細胞増殖が誘導された。抗Gas6中和抗体はそれらの反応を抑制した.さらに、抗Gas6中和抗体はGas6及び HS-5培養上清によって誘導されるERK活性、Aktリン酸化、NF-κBリン酸化を抑制した。これらの結果はGas6がオートクライン/パラクライン機構を介したMMの病態に重要な役割を演ずることを示した。次に、Gas6受容体TAMファミリーMer,AxL,Tyro3のいずれの受容体がGas6の関連するシグナル伝達に重要な受容体であるかを検討した。DNAマイクロアレイ法ではMM患者の骨髄腫細胞が Merが高発現していた。 Mer siRNAはMM細胞におけるGas6及びHS-5培養上清が誘導するアポトーシス抑制及び細胞増殖を抑えた。これらの結果はGas6/Mer/ERK経路、Gas6/Mer/Akt/ NF-κB経路がMMの病態の重要なメカニズムであることを明らかにした。本研究はMMの病態においてGas6が寄与する オークライン/パラクライン機構の重要性を明らかにした。さらに、Gas6/Merシグナル伝達経路がMMの新たな治療ターゲットとなる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)第77回 日本血液学会学術集会 (2015.10.16-10.18, 金沢)臨床血液, 56 (9), 442, 2015. 2)57th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition (2015.12.5-12.8, Orlando, USA). 3) 第78回 日本血液学会学術集会 (2016.10.13-10.15, 横浜) 臨床血液, 57 (9), 1445, 2016.本研究内容は上記の3つの学術集会で報告され、2017年3月にJournal of Biological Chemistryに掲載された。
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