研究課題
樹状細胞は抗原提示細胞として様々な免疫制御機構に関与しているが、移植医療の障壁となっている移植片対宿主病Graft versus host disease (GVHD)における役割についてはまだわかっていないことが多い。本研究では、細胞傷害性T細胞の分化を誘導する能力が高い樹状細胞サブセット(ケモカイン受容体XCR1を発現する樹状細胞サブセットXCR1+DC)に焦点を当て、XCR1+DCの動態、機能的意義を解析できるユニークなマウスを用いて、GVHDを中心とした疾患モデルの解析を進める。また、ヒトXCR1+DCを検出するために、抗ヒトXCR1抗体を調整し、染色条件を確定する。まず、XCR1+DC欠失マウスとして、XCR1の遺伝子座にcre recombinase遺伝子をノックインしたマウス(XCR1-creマウス)と、cre recombinaseの発現により転写が誘導されるジフテリア毒素遺伝子を持ったマウス(ROSA-STOP-DTAマウス)を交配することにより、XCR1-DTAマウスを作成した。次に、GVHDのモデルとして、C57BL/6の遺伝的背景を持つ野生型マウスの骨髄細胞、脾細胞を、放射線照射した、B6C3F1の遺伝的背景を持つ野生型マウスに移入することにより、50-150日で半分以上のマウスが死亡するような実験系を確立した。今後、野生型マウスとXCR1-DTAマウスから移入細胞を調整し、その比較検討を進める。また、すでに抗ヒトXCR1抗体を産生するハイブリドーマを樹立していたが、安定な抗体を得るため、そのハイブリドーマから免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域をコードする遺伝子をPCRにより増幅した。さらに定常領域をコードする遺伝子と融合させ、人工抗体の作製を進める。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスを得るための交配は順調に進んでいる。GVHDモデルもほぼ確立することができた。人工抗体の作成も順調に進展している。
生存率に加えて、組織解析も行えるように、ユニークな遺伝子改変マウスを十分量揃える。人工抗体については、得られた重鎖、軽鎖の可変領域をコードする遺伝子をそれぞれ、マウス免疫グロブリンγ2a鎖、κ鎖の定常領域をコードする遺伝子と融合させ、ヒト胎児腎臓細胞株293細胞へトランスフェクション(導入)する系により樹立する。
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Sci. Rep.
巻: 23 ページ: 6:23505.
10.1038/srep23505
http://www.wakayama-med.ac.jp/dept/igakubu/1606032/index.html
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/seitai/index.php