研究課題
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)に変異を有する腫瘍の治療成績を劇的に改善した。しかしながらTKI単剤では、耐性獲得などにより再発する例が多く、新たな治療法の開発が求められている。申請者らは、変異RTK を有する白血病細胞に対して、抗精神病薬chlorpromazine (CPZ)がRTKの細胞内局在を変化させることで、特異的な殺細胞効果をもたらすことを見出した。本研究では、この効果がTKI変異を有する様々な固形腫瘍において得られるかを検証するとともに、その分子機構を解析することで、様々な腫瘍におけるTKI耐性克服のための治療戦略基盤を確立することを目的とする。平成28 年度は、CPZ の固形腫瘍における抗腫瘍効果の検証として、非小細胞肺癌細胞株HCC4006(EGFR活性化変異)、H1437(MET活性化変異)、H1993(MET増幅)、H3122(EML4-ALK)、胃癌細胞株MKN45(MET増幅)を用いて、各阻害剤Gefitinib、Tivantinib、Alectinibとの併用効果について解析した。CPZ を至適血中濃度の範囲0-10μM 添加し、5 日間培養を行った結果、いずれの細胞株もRTKの局在変化により濃度依存的なviabilityの低下を認めた。さらにCPZと各TKIとの併用効果を検討した結果、相乗的な殺細胞効果をもたらすことを見出した。同様の検討を、Gefitinib耐性株HCC827GR、PC-9ZDを用いて検討した結果、EGFRのゲートキーパー変異(T790M)を有するPC-9ZDにおいて、CPZ併用によりTKI感受性が回復し、耐性を克服できる可能性が示唆された。一方HCC827GRでは、過剰発現するMETの細胞内局在がCPZ処理によっても変化せず、Gefitinib耐性が保持されていると考えられた。
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Rinsho Ketsueki
巻: 58 ページ: 138-142
10.11406/rinketsu.58.138.