研究課題/領域番号 |
16K19592
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
面川 歩 秋田大学, 医学部, 助教 (80722066)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メトトレキサート / 免疫調整薬 / X線結晶構造解析 / タンパク質相互作用 |
研究実績の概要 |
メトトレキサート(MTX)は,ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を標的とし葉酸代謝を阻害する薬剤で,現在,関節リウマチにおけるアンカードラッグとして広く用いられており,その有効性が確認されている.MTXの薬理作用は,複数の免疫抑制及び調節効果の結果と考えられているが,DHFRに対する阻害効果だけでは,その薬効を全て説明することはできない.申請者らはこれまでに,MTXに特異的な結合を示す複数の炎症関連タンパク質Aを同定することに成功している.タンパク質Aはその受容体を介した炎症反応を惹起するシグナル伝達に関与している炎症性サイトカインである.前年度までに,リコンビナントヒトタンパク質Aの大腸菌発現に成功しており,プルダウンアッセイにより,MTXがタンパク質Aに特異的に結合すること,またMTXの存在下タンパク質Aの酵素活性の阻害されることを明らかにしている.本年度は,タンパク質AにおけるMTXの結合様式を分子レベルで明らかにするために,MTX-タンパク質A複合体のX線結晶構造解析を行った.MTX-タンパク質A複合体の結晶構造解析の結果,MTXはタンパク質Aの基質ポケットに結合することが明らかになった.タンパク質Aの結合ポケット周辺の構造は,その受容体タンパク質との結合に重要であることから,MTXは,タンパク質Aと受容体タンパク質間の相互作用を阻害することで薬効を示す可能性が示唆された.現在,複合体結晶構造の結果はプロテインデータバンクへの登録手続きを進めており,本結果をもとに論文投稿準備中である. また,タンパク質Aに高い相同性を示すタンパク質Bが知られており,同じ受容体タンパク質に作用することがわかっていることから,MTXのタンパク質Bに対する作用機序を調べるためにタンパク質Bの大腸菌発現系を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初の目的通りに,MTX-タンパク質A複合体の結晶化に成功し,X線結晶構造解析により,MTXによるタンパク質Aへの結合様式を明らかにすることができた.また,タンパク質Aに高い相同性を示すタンパク質Bの大量発現及び単一精製に成功している.従って,予定項目通りに研究を推進できていると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,タンパク質Bの生化学的性質へのMTXの影響を調べるとともに,MTXとの複合体のX線結晶構造解析を行う.また,受容体タンパク質の発現系を構築し,タンパク質相互作用解析により,タンパク質Aまたはタンパク質Bと受容体タンパク質間の相互作用に及ぼすMTXの影響を検討する.さらに,マクロファージ系細胞を用いて,タンパク質Aまたはタンパク質Bによる細胞内シグナルにおけるMTXの影響を検討することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
MTXとタンパク質A複合体の結晶化には困難が予想されており、申請時点では、様々な方法による結晶化法を行う可能性を考慮した金額を算出,計上していた. 今後は受容体タンパク質のリコンビナント体の発現及び精製,関連タンパク質のX線結晶構造解析を行う予定である.また現在,マクロファージ系細胞を用いる細胞内シグナルの検討を進めており,それらの実験遂行に必要な機器、試薬類に使用予定である.さらに、現在投稿準備中の論文の校正費、投稿関係費として使用予定である.
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