研究課題
本研究では、IgG4関連疾患における線維化・硬化病態について、ヒトIgG4関連疾患組織検体や、Th2優位の免疫反応とリンパ増殖性疾患を起こしIgG4関連疾患モデルマウスであるLAT Y136F変異マウスを用いて、①各臓器病変における線維化・硬化の進展機序の解明、②各種治療薬の線維化・硬化抑制作用、また適切な治療時期の解明のための基礎的な知見を得ることを目的とした。これまでの研究で、線維化・硬化病巣に存在するコラーゲンのタイプについて本疾患の剖検腎標本を用いて解析し、腎皮質の花筵状線維化といわれる線維化・硬化病変と血管周囲病変における線維化・硬化病変とではコラーゲンの成分が異なること、また腎皮質においても線維化・硬化の進展に伴い線維性コラーゲンであるⅠ型・Ⅲ型コラーゲンが増加することを見出し、論文報告した。一方、本疾患の線維化・硬化病態に重要と考えられるTGF-β1について、ヒト検体を用いた免疫染色にて陽性細胞は極めて稀少であり、線維化の進行度との関連を統計学的に検討できるほどの浸潤ではなかった。ヒト臓器標本を用いて、B細胞の活性化・増殖・形質細胞への分化を促進するサイトカインであるAPRILと本疾患の特徴的病理像形成との関連を検討し、病変局所のAPRIL高発現、線維化への関与が指摘されているM2マクロファージによるAPRIL産生、ステロイド治療による明らかな発現低下を認め、本疾患の病理像形成にM2マクロファージが重要であることが示唆され、さらに形質細胞浸潤の豊富な他疾患の一部においてもM2マクロファージによるAPRIL産生があることから、必ずしも本疾患特異的な事象とは言えないことともあわせ、論文報告した。LAT Y136F変異マウスについて、週齢を重ねるにつれ各臓器病変において線維化スコアが上昇してくることを確認し、病変局所のAPRIL発現が確認された。
4: 遅れている
ヒト病変において細胞外基質と線維化・硬化との関連を論文報告したが、線維化に強く寄与するサイトカインの同定が遅れている。必ずしも本疾患特異的ではないが、M2マクロファージがAPRIL産生も介して特徴的な病理形成に関与していることを見出し論文報告し、マウスにおいてもAPRILの発現を認め、線維化を含めた病理像形成との関連を引き続き検討する必要がある。LAT Y136F変異マウスにおける週齢を重ねることによる病変の線維化進展について確認できたが、ホモ変異マウスのみ病態解析に使用可能な同マウスにおいて、ホモマウス作成に時間を要し、また他の解析にも使用されているためあわせて検体確保に時間を要している。また、免疫染色などの条件設定にも時間を要しており、研究遂行に当初予定よりも遅れが出ており、細胞外基質、サイトカインなどの病態の変遷との関連について、経時的な臓器病変の評価には至っていないため、達成度を遅れているとした。
今年度は、ヒトIgG4関連疾患病変において、引き続き線維化・硬化と、サイトカイン、ケモカインとの関連についての検討を進める。また、ヒト病変において関連が認められた分子・細胞について、LAT Y136Fホモ変異マウス作成を引き続き行い、同マウスの臓器病変においても経時的な線維化・硬化の進展との関連を解析する。
ホモ変異マウスのみ病態解析に使用可能なLAT Y136F変異マウスにおいて、ホモマウス作成に時間を要し、また他の解析にも使用されているためあわせて検体確保に時間を要している。また、免疫染色などの条件設定にも時間を要しており、研究遂行に当初予定よりも遅れが出ているため、実験の物品購入も遅れており次年度使用額が生じた。それにあわせ補助事業期間を延長した。2019年度は、ホモマウス作成の進捗にあわせ、物品購入を行っていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Nephrology Dialysis Transplantation
巻: 34 ページ: 960-969
10.1093/ndt/gfy296.
Clinical and Experimental Nephrology Case Report
巻: 8 ページ: 8-13
10.1007/s13730-018-0355-9.
Modern Rheumatology
巻: 29 ページ: 240-250
10.1080/14397595.2018.1546367.
Expert Review of Clinical Immunology
巻: 15 ページ: 231-239
10.1080/1744666X.2019.1560268.
Annals of the Rheumatic Diseases
巻: 78 ページ: 406-412
10.1136/annrheumdis-2018-214603.
巻: 28(2) ページ: 293-299
10.1080/14397595.2017.1332540.