研究課題
MDSC (myeloid-derived suppressor cell) は単球と好中球の表現型を持つ免疫抑制性の細胞集団である。申請者はMDSCがSKG関節炎マウスにおいて関節炎を抑制することを見出した。マウス骨髄細胞を取り出すと、ほとんどがMDSCの表現型である。これにGM-CSFを添加すると樹状細胞へと分化する。分化する前のMDSCは免疫抑制的であるが、分化した樹状細胞はT細胞を刺激する炎症性樹状細胞である。従ってMDSCが炎症性樹状細胞に分化しないように制御することは免疫治療につながると考えた。分化制御に関わる因子として細胞の代謝の制御に注目した。現在までに、代謝制御剤を用いて、下記のことを明らかにした。a.骨髄MDSCはGM-CSF存在下で培養すると樹状細胞に分化し、T細胞を活性化するようになる。どのような代謝経路が樹状細胞分化に必要であり、MDSCの維持に必要かを明らかにするために、解糖系、グルタミノリシス、酸化的リン酸化、mTOR系、AMPKなどを制御する薬剤を添加して、MDSCから樹状細胞への分化(CD11bとCD11c)と機能(CD80/86、PDL-1、など)への影響をFACSで検討した。mTOR阻害剤とGlutamine代謝阻害剤に注目して検討した。b.mTOR阻害剤とGlutamine代謝阻害剤存在下で、MDSCは樹状細胞への分化が抑制された。加えて、両者を併用すると相乗効果が認められ、よりMDSCが増えることが見出された。またmTOR阻害剤存在下で培養したMDSCはT細胞増殖を抑制した。この理由としてPDL-1の上昇、TGFβの増加などが考えられた。c.生体内での効果を検討するために、mTOR阻害剤とGlutamine代謝阻害剤を関節炎モデルマウスに投与したところ、単剤でも関節炎抑制効果が認められたが、併用療法でさらに関節炎を抑制した。
2: おおむね順調に進展している
mTOR阻害剤とGlutamine代謝阻害剤がMDSCから樹状細胞への分化を抑制することを明らかにした。さらに両者を関節炎モデルマウスに投与すると関節炎抑制効果を認めた。
これまでに得られた結果からは、代謝阻害剤(調節剤)により免疫病態を改善できることを示している。今後の検討課題は、代謝制御が免疫細胞に及ぼす影響を分子レベルで解析すること、膠原病患者での免疫細胞での代謝を解析すること、である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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