研究実績の概要 |
昨年度は, 主にバイサルファイトシーケンス解析およびChIP-PCR法によるイントロン1領域のDNA低メチル化領域の転写制御機構の解析, CTSEのSLEの機能解析を行った. バイサルファイトシーケンス解析にて、CTSEイントロン1領域内のCGCG配列で、B6に比較しMRLでDNAメチル化が有意に低下していることを確認した。同領域に結合するメチル化感受性転写因子の候補として、Kaisoに着目した。KaisoはC2H2 zinc-finger domainによりメチル化DNA配列(mCGmCG)を特異的に認識し、さらにSMART/ NCoR・ HDAC3)複合体をリクルートすることで、遺伝子発現を抑制するとの報告があり、同転写因子が同定したメチル化CGCG領域に結合し、CTSEの発現を負に制御する可能性が示唆された。CGCG配列へのKaisoとHDAC3の結合についてChIP-PCRを行い、MRLにおける同配列への結合能の低下を確認した。さらに、5-azaCとTSA処理後マウスリンパ腫細胞株(EL-4細胞)にて、同様にChIP-PCRで検討したところ、脱メチル化・ヒストンアセチル化状態にあるCGCG配列では有意にKaisoおよびHDAC3の結合能が低下し、CTSEのmRNA発現亢進を認めた。 また, CTSEのsiRNAを EL-4にエレクトロポレーションで導入し, PMA/Ionomycin刺激を行ったところ, CTSEをノックダウンすると, IL-10の産生が有意に増加し、細胞増殖も抑制された。 なお、ヒト末梢血単球細胞において、健常者に比較しSLE患者で有意にCTSEのmRNAの発現が上昇していた。さらにバイサルファイトシーケンス解析により、ヒトでもCTSEのイントロンでメチル化がSLEで有意に低下する部位を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CTSEのT細胞での機能解析を中心に行っていくことを予定している。 カテプシンファミリーは, 細胞のオートファジーにおいて, オートファゴソームでの分解に関連しており(Biochem J 441(2): 523-540), SLEのT細胞ではオートファジーが過剰になり, T細胞のapoptosis増加に関連している可能性が示唆されている (Stem Cells Int 2016: 4062789). そこで我々は, MRLでのCTSEの増加が, オートファジーの亢進やT細胞増殖に関連するかを検討(以下①②)し, さらにオートファジーのどの工程に最も関連を認めるかをLC3, p62等のWestern blottingやFACSで検討を行う. さらにCTSE阻害薬(Pepstatin A)の投与実験も検討する. ① siRNA(CTSE)でCTSEをknockdownさせたEL4細胞でproliferation assay (BrdU, ELISA)を行い, 増殖抑制能を検討する. ② CTSE遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを大腸菌にトランスフォーメーションしてプラスミドを回収, これをパッケージングレトロウイルスとHEK293Tにコトランスフェクションし, リコンビナント・ウイルスパーティクルを産生させる. これをEL4に感染させ, CTSEの過剰発現系を作成し, ①同様にproliferation assay (BrdU, ELISA)等を検討する.
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