研究課題
【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)は皮疹,関節炎,腎炎,中枢神経症状など多彩な症状を呈する自己免疫疾患であり,その制御性メカニズムにおいて制御性T細胞の働きが重要視されている.CD4+CD52high 細胞は自己免疫疾患において制御性の機能を持つことが報告されている.我々はSLE患者においてCD4+CD52low T細胞が増加し,SLEDAI,IgG値,抗ds-DNA 抗体価と正の相関を示していることを証明した.CD4+ CD52low T細胞は自己抗体産生を介してSLEの病態形成に関与している可能性があり,このpopulationの機能解析を行うことが病態形成 のメカニズムの解明の糸口になるのではないかと考えた.【方法】SLE 患者 N=64, 関節リウマチ患者N=23,健常人(HC) N=33の末梢血単核細胞を分離しフローサイトメーターにてCD4+CD52highT細胞とCD4+CD52low T細胞を解析した.【結果】SLE患者は健常人や非SLE患者と比較しCD4+CD52lowT細胞の割合が高かった.SLE 患者のCD4+CD52low T細胞の割合はSLEDAIや抗ds-DNA抗体価と正の相関を示した.Follicular Helper Like T 細胞(Tfh like細胞)はSLE患者で増加しており,CD4+CD52lowT細胞の割合と正の相関を示した.CD4+CD52highT細胞とCD4+CD52lowT細胞の遺伝的特徴を解析するため行ったcDNAマイクロアレイにおいてSLE患者のCD52lowT細胞ではCCR8が発現更新しており,そのリガンドであるTARCはSLE由来のCD4+T細胞からCD52lowT細胞を誘導した.【結論】TARCはCD4+CD52lowT細胞を誘導することでB細胞との相互作用により抗体産生に関与している可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
CD4+CD52+細胞は従来の制御性T細胞とは異なる機能を有している可能性が示唆されており,この点に着目をして自己免疫疾患であるSLEにおける新規標的分子となり得るかについて研究を行っている.平成28年度の研究で以下のことを明らかにした.SLE 患者は,健常人,非SLE 患者と比較し,有意にCD52lowT細胞を多く認めた.SLE 患者のCD52lowT 細胞はSLEの疾患活動性指標であるSLEDAI と有意に相関を示した.血清中の可溶性CD52をELAISA法で解析を行った結果, SLE 患者は,健常人,非SLE 患者と比較し,有意に可溶性CD52の低下を認めた.胚中心における形質細胞分化誘導へ関与しているTfh like細胞はSLE患者で発現亢進しており,CD4+CD52lowT細胞の発現と正の相関を示した.SLE患者のCD4+CD52lowT細胞においてCCR8のmRNA発現が亢進しており,そのリガンドであるTARCはCD4+CD52lowT細胞を誘導した.これらの結果2015年,2016,2017年日本リウマチ学会,2015年,2016年米国リウマチ学会,2015年11月日本臨床免疫学会において発表しており,近日中に論文投稿予定である.
TARCがSLE病態に影響する機序をさらに検討するため,培養実験を予定している.SLE由来のCD4+細胞をTARC有無の条件で培養を行い,CD52lowおよびHighの分画を分取し,それぞれのサイトカイン(IFNgやIL-21)産生能の変化や,CD52low細胞とB細胞の共培養によるIgG産生能の変化などを検討する予定としている.また今回の検討でCD52low細胞の割合をSLE患者の男女間で比較したところ両群間で疾患活動性に差がないのにもかかわらず女性においてCD52low細胞が増多していることが明らかとなっている.性差における因子がCD52 low T細胞を介した機序によりSLE病態に関わっている可能性があり,エストロゲンなどの性ホルモン添加によるCD52 low T細胞誘導実験なども検討する予定としている.
2017年3月時点においては実験に必要な物品に残存があったため.
2017年4月以降に予定している培養実験に使用する抗体,培養液,リンパ球分離液などの購入を予定している
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