マスト細胞は、古典的にはアレルギー応答における最も重要なエフェクター細胞の1つとして知られているが、近年アレルギーのみならず自己免疫疾患や糖尿病など多病態への関与が示唆されている。その一つとして肥満や動脈硬化など脂肪組織における慢性炎症が関与する病態にも関係することが示唆されてきた。そこで我々はマスト細胞と脂肪組織の関連性を検討するため、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)にマウス皮下脂肪から採取したADSC由来の脂肪細胞の培養上清を添加することで、変化を観察した。するとBMMCはF4/80やCD11bを発現し、貪食能を有するなどマクロファージ用の形質に転換することを見出した。この変化は脂肪細胞が分泌する何らかの液性因子によると考えられたため我々は脂肪細胞の培養上清をHPLCで展開することによりfractionizeし、各々の分画をBMMCに添加することでマクロファージ用フェノタイプを誘導せしめる活性分画を見出した。これをSDS-PAGEで分離し、銀染色により得られたbandをLC-MS/MSに供することで、いくつかの候補因子を見出した。さらにマクロファージ様の形質に転換したマスト細胞を養子移植することによりマウスの耐糖能異常が惹起されるなどの影響を確認している。本研究の結果は脂肪組織とマスト細胞の新しい関連を示すものであり、脂肪組織に由来する慢性炎症の新たな治療法につながる可能性がある。
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