研究課題
思春期以降の成人喘息患者の有病率や再発率は男性より女性で高く、末梢血中のTh2サイトカイン産生T細胞数は男性より女性で増加している。しかしながらその機序は十分解明されていない。昨年度までの研究において、喘息モデルマウスから採取した気管支肺胞洗浄液中の好酸球数ならびにエフェクターTh2細胞数、ならびにTh2サイトカン産生量がオスよりメスにおいて増加している可能性を明らかにしてきた。さらに、Th2細胞分化の場である気管支リンパ節のCD103+樹状細胞における共刺激分子の発現、抗原貪食能、Th2細胞分化誘導能がオスよりメスで亢進している可能性を報告した。そこで本年度はまず、肺において樹状細胞前駆細胞の誘引、樹状細胞への分化ならびに活性化に関わるケモカインやサイトカイン産生量の性差を検討した。気管支喘息モデルマウスの肺において、抗原である卵白アルブミン(OVA)吸入16時間後においてCCL20、Flt3L、IL-33の遺伝子発現がオスよりメスにおいて増加していた。気道上皮細胞は、アレルゲンおよびアレルゲンに含まれる病原体関連分子パターン(PAMPs)による刺激に応答してケモカインおよびサイトカインを産生し、樹状細胞やTh2細胞の誘引と活性化に重要な役割を果たす。そこで次に、オスとメスの喘息モデルマウスから気道上皮細胞を採取し、PCR法にてサイトカインやケモカインの発現の性差を比較したところ、オスマウスよりメスマウスにおいて、CCL2、GM-CSF、およびIL-33遺伝子発現が増加している傾向を認めた。これらの点については、結果を確かなものとするため、さらに検討を加える予定である。ヒト気道上皮細胞株であるBeas-2Bを用いた検討においても、TNF-α刺激下においてCCL2、GM-CSFの産生が認められ、17βエストラジオールによりその産生量は有意に増加した。
3: やや遅れている
喘息モデルマウスの気道上皮細胞における性差を明らかにしたのち、樹状細胞の性差を規定する気道上皮細胞特異的責任遺伝子欠損マウスを作成する予定である。責任分子の確定が次年度になることから、気道上皮細胞における責任遺伝子欠損マウスの作成に遅れが生じている。
気道上皮細胞において、樹状細胞の性差を規定する責任分子を明らかにし、それらの遺伝子を気道上皮細胞特異的に欠損させたノックアウトマウスまたはノックダウンマウスを作成する。ノックアウトマウスまたはノックダウンマウスの作製において、アデノ随伴ウイルス等を用いた組織特異的なmRNA欠損マウスの作成を検討しており、気道上皮細胞における責任分子の確定と並行して準備を開始している。
樹状細胞の性差を規定する気道上皮細胞の責任分子の確定が当初の研究計画より遅れたため、気道上皮細胞特異的遺伝子欠損マウスの作成を次年度に行うこととした。従って、本年度に使用する予定であった経費のうち、気道上皮細胞特異的遺伝子欠損マウスの作成にかかる費用の一部を次年度に繰り越して使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Allergol Int.
巻: 67(1) ページ: 32-42.
10.1016/j.alit.2017.04.013.
巻: 印刷中 ページ: -
10.1016/j.alit.2017.11.007.
http://www.tohoku-mpu.ac.jp/pharmacy/about/lp_c03/