研究課題/領域番号 |
16K19612
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
橋田 裕美子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (00767999)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 皮膚 / 微生物 / 疫学 |
研究実績の概要 |
人の皮膚には多くの微生物が常在しており、微生物叢を形成している。本研究では、皮膚に常在するウイルスに着目し、皮膚ウイルス叢を構成する各種ウイルスの感染状況が加齢とともにどのように変化するのか、その変化と疾患との関連性を探求する。 本年度は、皮膚指向性ウイルスとしてヒトポリオーマウイルス6型(HPyV6)、ヒトポリオーマウイルス7型(HPyV7)に着目し、皮膚での感染実態を調査した。HPyV6とHPyV7は、健康な人の皮膚スワブから発見され、その後皮膚掻痒性角化症やいくつかの皮膚疾患との関連が示唆されたが、健常者の皮膚においての各年代の分布状況や感染実態は不明であった。そこで、小児から高齢までの健常者から皮膚スワブを採取し、HPyV6とHPyV7のゲノムの検出と定量を行った。 その結果、皮膚におけるHPyV6とHPyV7の感染率とウイルス量は年齢とともに増加し、80歳以上の高齢者で高い傾向が明らかになった。一方で20歳未満の小児皮膚でのウイルス量は、成人の皮膚よりも有意に低かった。また、昨年度に報告した同属のメルケル細胞ポリオーマウイルスは、日光暴露部位である頭部において、日光非暴露部位である上腕よりもウイルス量が多かったことから、HPyV6とHPyV7においても部位によるウイルス量の差を検討した。その結果、上腕と頭部では有意なウイルス量の差は認められなかった。このことから、HPyV6とHPyV7の感染は日光暴露に影響されない可能性が示唆された。 以上のことから、HPyV6とHPyV7の感染は高齢者で増加していることが明らかとなり、老化により免疫抑制状態になることがHPyV6とHPyV7の感染を活発化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、皮膚ポリオーマウイルス研究において重要な指標となるHPyV6とHPyV7の健常者における感染実態データを得ることができた。不明であった皮膚常在ウイルスの感染状況の一端を明らかにすることができ、今後の研究の基盤を強固にすることができたことから、研究が計画通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
健常者における皮膚ポリオーマウイルスの感染実態が明らかとなったことから、次に皮膚疾患症例を収集し、ウイルスの感染実態を調べることで疾患や病態との関連性を解析する。 また、収集した検体をもとに各ウイルスの遺伝子配列を詳細に解析し、変異状況等を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、試薬など消耗品を中心に最低必要限の予算を計上したため、繰越金が発生した。次年度は最終年度として、ウイルス遺伝子解析用試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、および外注費、学術誌掲載のための費用を予算に計上する。
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