本研究では、持続腎代替療法を受けている敗血症患者において有効な抗菌薬投与方法を確立するために、当該患者において投与された抗菌薬の薬物濃度を測定し、母集団薬物動態解析法を活用して、その有効な投与方法の確立を試みている。 その結果として、まずはバンコマイシン、メロペネムを投与した持続腎代替療法施行中の患者において、母集団薬物動態モデルを構築した。バンコマイシンについては乏尿という全く新しい概念の共変量を組み込んだモデルを構築することに成功し、メロペネムについては、重症度スコア(SIRSスコア、SAPSスコア)を組み込んだ独創的なモデルを構築することに成功した。これらのスコアや臨床状態は、特別な検査を必要とするわけではなく、あくまで敗血症患者の診療の過程で評価されるものであるために、その評価結果を抗菌薬の投与量計算にも役立てることのできるモデルを構築したという点は、臨床において受け入れられやすいと考えられる。これらの研究成果について、学会発表を行い、現在英文誌に投稿している段階である。 また迅速な測定系の確立については、高速液体クロマトグラフィ法を活用した方法により、16種類の抗菌薬の測定を、同じ移動相、カラム、を使用することによって達成している。すなわち、臨床において煩雑な測定準備等を極力低減することに成功しており、臨床の検体の血中濃度測定が可能な段階に進展した。この手法をもって実際に臨床検体を測定したところ、ドリペネムの投与において、耐性緑膿菌患者の治療に有効である可能性を示した症例報告をまとめた。現在、英文誌に投稿中である。
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