研究課題/領域番号 |
16K19617
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
布矢 純一 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40466842)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CAR-T細胞 / 疲弊 / 免疫チェックポイント / HIV |
研究実績の概要 |
本研究計画は、CAR-T細胞における免疫チェックポイント分子の発現制御を基盤として疲弊抵抗性CAR-T細胞を開発し、代表的な慢性感染症であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症をモデルとして、その有用性を検討することが目的である。平成28年度は疲弊抵抗性CAR-T細胞の作製システムの構築とT細胞における疲弊抵抗因子の機能解析を試み、以下の結果を得た。 1. 疲弊抵抗因子としてLymphocyte Expansion Molecule(LEM)およびBACH2のcDNAクローンを理研バイオリソースセンターより入手し、GFPを共発現するレンチウイルスベクターを作製した。 2. 抗CD3/CD28磁気ビーズで活性化させたヒト末梢血単核球細胞(PBMC)に遺伝子導入を行った。フローサイトメトリーにて遺伝子導入細胞を確認することができた。 3. 活性化ヒトPBMCにレンチウイルスベクターを用いてLEMおよびGFPを発現させると、GFPのみを発現させた細胞に比べてGFP陽性細胞の増殖が亢進した。PD-1陽性細胞はGFP陰性細胞で増加しているのに対し、GFP陽性細胞では増加していなかった。 4. 3種類の異なる共刺激シグナルを有するHIV Env特異的CARおよびGFPを発現するレンチウイルスベクターを用いて、活性化ヒトPBMCにCAR遺伝子を導入した。GFPを指標としてセルソーティングを行い、CAR-T細胞の純度を約7%から約80%にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトPBMCへのレンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入の効率が研究計画当初の予想以上に悪く、実験システムの構築に時間を要した。ベクターウイルス作製方法の改良と高速遠心による濃縮を導入し、問題点は解決している。
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今後の研究の推進方策 |
1. CAR-T細胞における共刺激シグナルの役割の解明。 3種類の異なる共刺激シグナルを有するHIV Env特異的CAR-T細胞を作製する。細胞増殖の解析、CARおよびPD-1の発現やメモリー表現型(CD45RO、CCR7)をフローサイトメトリーで解析する。作製したCAR-T細胞を標的細胞と共培養し、産生されるサイトカインの測定や細胞傷害性の解析、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼの定量を行う。 2. T細胞の増殖や疲弊におけるBACH2の役割の解明。 活性化ヒトPBMCにBACH2を導入し、細胞の増殖およびPD-1の発現をフローサイトメトリーで解析する。 3. 疲弊抵抗性CAR-T細胞の作製。 CAR-T細胞にLEMやBACH2を発現させ、疲弊抵抗性CAR-T細胞を作製する。標的細胞との共培養で産生されるサイトカインの測定や細胞傷害性の解析を行う。 4. HIV特異的CAR-T細胞の抗HIV効果の解析。 HIV感染細胞とCAR-T細胞を共培養し、HIV複製を抑制できるかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトPBMCへのレンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入の効率が研究計画当初の予想以上に悪く、実験システムの構築に時間を要し、実験計画にやや遅れが生じたため。ベクターウイルス濃縮のため、高速遠心機のローターを購入し、問題点は解決している。
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次年度使用額の使用計画 |
ベクターウイルス作製のため、プラスミド精製キットとプラスチックディッシュ等を購入する。活性化PBMCの培養およびレンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入のため、抗CD3/CD28磁気ビーズやレトロネクチン等を購入する。フローサイトメトリーでの解析用に蛍光標識抗体を購入する。HIV特異的CAR-T細胞の抗HIV効果の解析のため、HIV p24抗原ELISAキットや蛍光標識抗HIV p24抗体を購入する。
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