本研究計画は、CAR-T細胞における免疫チェックポイント分子の発現制御を基盤として疲弊抵抗性CAR-T細胞を開発し、代表的な慢性感染症であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症をモデルとして、その有用性を検討することが目的である。 これまで、CAR-T細胞の創出には、CD28あるいは4-1BB由来CSSDが広く用いられてきたが、Herpes Virus Entry Mediator (HVEM)由来CSSDの有用性については検討されていなかった。まず、それぞれのCSSDを有するCAR-T細胞を創出し、そのエフェクター機能を比較した。CAR発現量とCAR-T細胞のエフェクター機能は正の相関を示し、比較した3つのCSSD(CD28、4-1BB、HVEM由来)の中ではHVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞が一番高いエフェクター活性を示した。次に、これらの性状解析を行った。その結果、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、①セントラルメモリーおよびエフェクターメモリーT細胞にバランスよく分化すること、②高いエネルギー代謝状態を有すること、③T細胞疲弊を回避することが分かった。また、HIV感染CD4 T細胞をCAR-T細胞と共培養することによりHIV特異的CAR-T細胞のHIV複製抑制能を解析したところ、HVEMを有するCAR-T細胞が最も高いHIV複製抑制能を示すことが分かった。 これらの研究成果により、これまであまり明確ではなかったCSSDとCAR-T細胞の機能および性状の関係性の一端を解明することができた。また、HVEM由来CSSDを用いてプロトタイプの疲弊抵抗性CAR-T細胞を創出し、その有用性を評価できた。今後、疲弊抵抗性CAR-T細胞の研究開発に応用されることが期待される。
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