<最終年度に実施した研究の成果> 具体的内容:尿中落下細胞中にアルカリフォスファターゼ(以下、ALP;未分化な状態の多能性幹細胞で高発現する)陽性の細胞が存在することを確認した。また、尿中落下細胞を2-3週培養すると、ディッシュ底面に接着した細胞の上に盛り上がるようにspheroid様の構造物を作ってくる現象を認め、この構造物はALP陽性であった。このALP陽性細胞は紫斑病腎炎、感染関連腎炎、アルポート症候群の患者に由来する尿中落下細胞のいずれにも含まれることを確認した。この細胞は培養開始1週間の時点から少数認められ、尿中落下細胞の多くを占める上皮細胞のように密に増殖することはなく、様々な種類の上皮細胞の中に散在していた。 意義:尿中落下細胞中にALP陽性細胞が散在し、自律的にspheroid様の構造物を形成する現象を認め、多能性幹細胞の存在を強く示唆した。また、密集せずに散在する分布様式からは間葉系に由来することが推測された。このALP陽性細胞を単離しようとspheroid様構造をゼラチンコートディッシュに移植し、数個の細胞がディッシュ上に出てきたが、増殖しなかったため、PCR等による多能性マーカーの確認まで至っていない。 <全体を通じた研究> 当初予定したFACSによる多能性幹細胞の単離が、細胞の状態の不良や技術的な問題により、実行できなかった。そのため、研究プランに大きく遅れを生じた。FACS以外の多能性幹細胞の検出方法として、ALP染色を行い、3種類の腎疾患でALP陽性細胞を確認した。引き続き、この細胞の単離方法を検討し、ALP染色以外の多能性の確認、腎生検標本上での局在の確認を行っていく。
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