研究課題/領域番号 |
16K19627
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 愛章 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90635608)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心磁図 / 川崎病 / 冠動脈病変 / 心筋虚血 / 電流ベクトル |
研究実績の概要 |
【方法】川崎病性冠動脈病変があり長期フォローされている症例7名(中央値20歳、範囲10~32歳)、健常成人ボランティア17例(中央値31歳、21~61歳)を対象とし、通常の12誘導心電図の記録と、心磁計測装置(日立ハイテクノロジーズ社製MC-6400)を用い、正面・側面・背面の3方向の心磁図を記録した。専用の心磁図解析ソフトを用い、隣接する2点間の磁界勾配により各点の電流ベクトルアローとして表示する、電流アロー図を作成した。また正面・側面・背面の3方向の平均および最大のベクトル成分についてベクトル環を作成した。正面の記録から、T波をピークを含む4時相(ST80, ST110, Tp, Te)に分け、各時相における最大の電流を持つベクトルの角度(最大電流角度)、全電流角度の差も算出した。①最大電流角度(Tp)、②平均電流角度(Tp)、③平均電流角度差(Tp-ST110)、④平均電流角度差(Tp-Te)、⑤最大電流角度(ST80)、⑥平均電流角度(ST80)のそれぞれを基準範囲から外れた項目があれば1点とし、合計点を再分極異常スコアとして算出した。【結果】冠動脈病変のある症例では12誘導心電図で明らかな異常があったのは2例で、心磁図による再分極異常スコアが1点以上だったのは1例のみであった。健常ボランティアではST-Tの時相の側面の平均ベクトル環の方向が後ろ向きは12例(70.6%)、中央は5例(29.4%)、前向きは0例(0%)であったが、冠動脈病変のある症例では3例(42.8%)で前向きであった。【結論】冠動脈病変のある症例でも、必ずしも12誘導心電図では典型的な虚血性変化を示さず、心磁図による再分極異常スコアも陽性にはならなかったが、側面の電流ベクトルの方向で異常を示す症例が多かった。多方向での電流ベクトルの方向の評価が心筋虚血の初期変化を検出する指標となる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以前に確立された再分極異常スコアが川崎病性冠動脈病変を持つ症例での心筋虚血の初期変化の検出に有効である、という仮定で研究を進めていたが、今回の検証で明らかに異常のある症例でもスコアで異常とはならないことが判明した。一方で側面を含めた多方向からの記録が有効である可能性も示された。正面・背面のみの健常ボランティアのデータは多数あるが、側面方向の心磁図記録は健常例での記録が限られているため、新規で健常ボランティアでのデータ収集が必要となる。また小児への応用を目標としており、正常コントロールとして、小児の健常ボランティアによる心磁図記録を行う予定であったが、募集に対し十分は数が確保できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、①健常小児による心磁図の基準値を確立し、②川崎病患児の心磁図データと比較する予定である。①ボランティアを効率良く集めるために新聞広告のみではなく、地域の学校に研究協力を依頼する。②川崎病患者の心磁図データをより多く集積するために、地域の病院などにも症例の紹介を依頼する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたデジタル心電計による記録が機器に支障があり実施できていない。デジタル心電計用の生体アンプを購入予定であったが、現在使用を再開できるめどが立っていないため、購入を見合わせている。
|
次年度使用額の使用計画 |
デジタル心電計が使用できるようになった時点で生体アンプを購入する。 正常コントロールとして健常ボランティアの心磁図データが必要であり、今後の募集でボランティアが集まらない場合は、謝礼などに充てることも検討する。
|