研究課題
本研究においては1型および2型糖尿病小児における血糖コントロール機構が正常小児と比較してどのように破たんしているかを明らかにする。2017年度は、茨城県1型糖尿病サマーキャンプ実行委員会と協力し、サマーキャンプの場に泊まり込みで参加した。小児糖尿病の患者25名のうち同意を得た20名を対象に早朝空腹時に採血を行った。年齢は5歳から15歳であり、男女比は8:12だった。インスリン抵抗性を評価する指標として血中アディポネクチンに加えて、空腹時の総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド比の計測を行った。さらにインスリン分泌能の評価として早朝空腹時の血中Cペプチドを測定した。現時点での血糖値の指標としてHbA1cを計測した。これらに加えて患者本人から身長・体重・1日インスリン使用量を聴取した。HDLコレステロール/トリグリセリド比はインスリン抵抗性の指標となりうることが近年報告されているが、小児に対する報告はわずかであり、アジア人1型糖尿病における検討は報告されていない。HDLコレステロール/トリグリセリド比と臨床上のインスリン抵抗性を反映する指標として1日インスリン総量、Cペプチド、体重、BMI-SDスコア、肥満度、HbA1cなどとの相関を検討したが有意な相関は得られなかった。2型糖尿病小児に対しては、新規症例に対する経口ブドウ糖負荷試験を2例に対して行った。この2検体に対する計測はまだ行っていない。過去に採取されたブドウ糖負荷試験後の検体が75件冷凍保存されており、これと合わせて今後計測を行っていく。そのために必要な情報として、過去に実際された試験検体の臨床情報の整理を行っている。
4: 遅れている
過去に報告されているインスリン抵抗性の指標を用いて、初めてアジア人小児における検討を行ったが有意な新知見が得られなかった。この原因として、サンプルサイズが小さいこと、横断的研究であることが考えられる。また、小児対象に軽微な侵襲(採血)を与える研究である性格上、当初は被験者への負担を最小化することを意図して空腹時に単回採血するプロトコールとしたためである。
サンプルサイズの拡大のため、病院受診者に対して幅広く広報をする。患者団体が普段から使用しているインターネット・SNSによる交流の場に、本研究の情報提供の機会を作る。縦断的研究とするために、同一対象に対して経年的に経過を観察して同一項目を評価し続ける。これを達成するために茨城県糖尿病サマーキャンプ実行委員会と協力し、この集団に対して診療・疾患情報提供および療養サポートを提供しながら研究コホート化していく。単回採血では十分な結果が得られなかったため、経口食事負荷試験後に複数回採血し、インスリン分泌にかかわる因子を検討する。これを耐糖能正常な小児や境界型糖尿病小児に対しても行う。ただし、新規に患者をリクルートするには時間的経済的コストがかかるので、過去に採取されたブドウ糖負荷試験の残検体75件に対して検討を行う。
実験試薬の購入が行われなかった。すなわち、経口ブドウ糖負荷試験試験によって得られた検体を計測する際に用いる実験試薬が高額なために物品費用を大きく見積もっていたが、実際には1型糖尿病に対する計測に多くの時間を費やし、その計測は民間の検査会社に発注したために「その他」品目となった。
経口ブドウ糖負荷試験を実施する。または過去に採取された検体を用いて計測する。2年分の資金を投入することにより、より多くの試薬を購入することができる。この利点を活用して、過去に採取された多くの経口ブドウ糖負荷試験検体の計測を行う。
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