研究課題
2017年度に行った事業は、引き続いての検体採取、最新式の血糖測定機器の実用性に関する研究発表、質量分析計の導入および共同研究体制構築の試みを行った。検体採取:2016年度に引き続いて茨城小児糖尿病サマーキャンプに参加して、20名分の早朝空腹時血液を採取し、血中のCペプチド、インスリン、アディポネクチンなどの測定を行った。血糖測定機器:2017年から保険診療下での実用可能となったフラッシュグルコースモニタリングシステムにより、24時間の血糖値の変化を低侵襲的に評価可能となった。この機器の最大の問題は従来式の血糖特定との間の数値の乖離であり、この乖離がどのような条件で最大化・最少化するかについての観察研究を行い、2017年9月28日日本小児内分泌学会の学術集会において発表および研究者との討論を行った。質量分析計は微量の血液を用いて多種のペプチド濃度を測定する有用な手法である。本研究で採取された検体に対してこの手法を応用するべく、現在この手法を用いて研究・臨床を行っている機関との共同研究を模索した。新生児マススクリーニングに用いられていることから、日本マススクリーニング学会に入会し茨城県における新生児マススクリーニング事業に積極的にかかわった。マススクリーニング対象疾患であるグルタル酸血症1型について1症例の観察および病態解析を行い、日本小児科学会雑誌へ症例報告を投稿し受理された。これらの活動を通して、日本マススクリーニング学会や茨城県産科婦人科学会との共同研究体制を進めていく。
3: やや遅れている
検体測定環境の整備が先行し、実際の検体採取が遅れている。採取機会の向上を目指して、県内の他施設との共同診療体制の強化を試みる。
引き続き1型および2型糖尿病の患者の検体を採取し、血糖制御機構の関するペプチド濃度の測定を行う。現時点ではELISA法を応用したマルチプレックスアッセイを行って数値を得て論文化を行う。同時進行で質量分析計を用いた新規アッセイの確立を目指す。さらには、単一遺伝子変異によって引き起こされる糖尿病についても同様の検討を行う。今年度最も懸念される課題は検体数の不足である。その背景としてこうした疾患の患者数は限られており、総人口に対して一定数以上は存在しない。これを解決するために全国的な研究者のネットワークを構築し、多くの検体採取を目指す。
当初の予定では実験試薬と測定機器の消耗品を3年間にわたって購入して一定のペースで消費して実験を行うとしておりましたが、実際にはここまでの2年間では実験試薬と測定機器の消耗品の購入額が予想よりも少ないため、次年度使用額を生じています。これは、試薬および消耗品の消費期限が短いことから、購入から1年以上を置いて測定できないことによります。本研究では測定系の確立が主要な実験対象となり、測定系確立に当たっては既存の測定機器(ハード)を用いて、少量の検体を対象に測定条件などを調整する部分が大きかったため、多くの機器や試薬を消費することがありませんでした。また、測定に用いる検体を採取・保存していました。2018年度にはこれまでに採取・保存した検体を用いて、様々な項目を対象にした計測を行うために多量の試薬や測定機器の消耗品購入を予定しております。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
日本小児科学会雑誌
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Pediatrics International
巻: Epub2017 ページ: 939-940
0.1111/ped.13316
巻: 59 ページ: 1039-1045
10.1111/ped.13323.