研究課題
2018年度には、これまで同様の血液等検体採取に加えて理学的な所見の収集を新たに行った。最近注目される知見として、高血糖による終末糖化物質(Advanced Glycated End-product: AGE)が筋肉や運動器支持組織に蓄積し、様々な理学所見を呈することが注目されている。本研究では、筑波大学附属病院リハビリテーション部に所属する理学療法士の協力を得て、1型糖尿病患児の運動機能評価を行った。すなわち、体組成指標として肥満度、骨格筋率,体脂肪率(株式会社インボディ・ジャパン社製 In Body770による測定)。上下肢筋力検査として握力,立ち上がり検査(LV1~8),足趾筋力。バランス検査として開眼片脚立位時間(最大120秒),閉眼片脚立位時間(最大60秒),姿勢安定度評価指標(Anima社製 Gravicorder GS-6000による測定),閉眼軟面立位での姿勢安定度評価指標。痛覚閾値検査として表皮内神経終末痛覚閾値検査を測定した。これら20名の1型糖尿病小児に対して行い、年齢・性別をマッチさせた健常小児と比較した。筋肉量・脂肪量・姿勢安定度などで有意な差があり、2019年の日本糖尿病学会学術集会で発表予定である。これに合わせて、進行した糖尿病患児に見られる筋痛や関節可動域制限についても同様に評価を行い、2018年日本小児内分泌学会で発表を行った。2018年度にこうした研究活動を通じて得たものは、1型糖尿病小児に対する運動理学所見を取る行為自体の実現可能性(feasibility)の確立および、少数例ながら正常範囲の確立と健常小児との差異を検出した。
3: やや遅れている
本研究の主たる方法は、糖尿病患児から採取した血液中のペプチド濃度を計測することである。このうち最も重要なペプチドの1つであるグルカゴンの活性体の正確な測定系について、学会での議論が再度活発化し、販売される様々な試薬を試用して数値を検討する作業が遷延した。また、研究者が病院内業務により多忙となったこともあり、期間を延長して測定方法を検討した上で、作業を進める。こうした測定手法に対する評価の変遷を受けて、成人における評価方法が確立している運動理学所見を小児に対して適用する研究を開始した。
過去3年間の研究実績を応用して、運動理学所見と血液中のペプチド濃度、さらには運動器に直接蓄積するAGEの計測などを行い、小児1型糖尿病に特有の血糖制御および全身への高血糖による変化の生じ方を定量化することを目指す。具体的には、1型糖尿病小児が数多く集まり、豊富な時間を有する機会である1型糖尿病サマーキャンプをはじめとした、患者会のイベントの開催に積極的に参加し、非侵襲的な手法によるサンプルの収集を行う。対象患者をより広い範囲からリクルートするために、県内の他機関との連携を強化する。また、日本小児思春期糖尿病学会が主導して行う他施設共同研究である「小児インスリン治療研究会」に参加し、新たな知見を早期に得る。
当初の予定では実験試薬と測定機器の消耗品を3年間にわたって購入して一定のペースで消費して実験を行うとしておりましたが、実際にはここまでの3年間では実験試薬と測定機器の消耗品の購入額が予想よりも少ないため、次年度使用額を生じています。これは、試薬および消耗品の消費期限が短いことから、購入から1年以上を置いて測定できないことに加えて、主要な測定対象であった血中グルカゴンの測定方法に関して、従来の方法では正確な評価が行えないのではないかという学術的な議論が再活性化しつつあり、本研究においてもいったん測定を中断して検体を保管し、最適な測定方法に関する学術的な評価が定まった時点でまとめて計測を予定しております。
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小児科臨床
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Rep Pract Oncol Radiother.
巻: 23 ページ: 442-450
0.1016/j.rpor.2018.08.006