研究課題
茨城県糖尿病サマーキャンプに参加する小児1型糖尿病症例のうち、書面による同意が得られた参加者を対象に研究を行った。血糖制御機構のうちインスリン抵抗性を示す代理マーカーとして1日インスリン投与量およびHbA1c,グリコアルブミンを用い、インスリン分泌能を示す代理マーカーとして空腹時血清Cペプチド濃度を用いた。これらの血統制御能と、早朝空腹時におけると血中GLP-1,GIP,アミリン、グルカゴン、グレリンといった血糖制御関連ペプチド、およびGAD抗体、IA2抗体、ZNT8抗体といった膵島自己抗体、並びにTSHレセプター抗体、TPO抗体、サイログロブリンといった甲状腺炎の指標との相関を検討した。本検討ではインスリン抵抗性・分泌能とこうした生理学的なマーカーとの間には有意な相関は得られなかった。その原因として、GLP-1やGIPは主に脂肪食の負荷後に分泌されること、それらによるインクレチン効果は脂肪食後に出現するので、早朝空腹時には表れないことが考えられた。今後の類似の研究を実施する上での留意点として、高脂肪食の負荷後の同様の検索が有用と推定されるが、小児に対する脂肪食負荷はブドウ糖負荷試験と異なり体重や年齢に応じた最適な量がいまだに標準化されていない。標準的な脂肪負荷試験法の確立が、小児における血糖制御機構の解明に有用と推定される。また、本研究と並行して1型糖尿病における末梢神経障害や筋肉量減少についての検討を行った。1型糖尿病では同年代健常小児と比較して筋肉の減少、脂肪の増加、重心動揺計による立位でのバランス保持能の低下があることが世界で初めて示された。成人期には長期罹病後に初めて生じる現象であり、小児期には短期間の罹病で生じる原因は不明である。小児期の運動能力・筋肉量の発達期における高血糖状態の介在が与える影響について今後の検討課題と考えられる。
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Pediatr Transplant
巻: 23 ページ: e13424
10.1111/petr.13424