• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

B型肝炎ワクチン反応性を規定するClassⅡHLAアリルの探究

研究課題

研究課題/領域番号 16K19629
研究機関筑波大学

研究代表者

酒井 愛子  筑波大学, 附属病院, 医員 (40592184)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードHLA / 遺伝子多型 / B型肝炎 / ワクチン免疫 / 蛋白構造 / 感染免疫 / 個人差 / 抗原提示
研究実績の概要

初年度は574名の対象者においてClass II HLA (HLA-DPB1, DQB1, DRB1)のアリル、アミノ酸多型について検討し、B型肝炎(HB)ワクチン反応性と有意に関連するアリルとアミノ酸多型を同定した。さらに同定したアミノ酸がHLA-DP, DR分子において抗原結合に重要とされる部位である「ポケット」に位置していることを明らかにした。
Class II HLA分子はα鎖とβ鎖からなるヘテロ二量体であり、今年度は、HLA-DP分子の構造をさらに詳細に明らかにするために、951名の対象者において、HLA-DPB1(β鎖)に加えてHLA-DPA1(α鎖)のgenotypingを行い、HLA-DPA1, DPB1両方の抗原結合領域の全アミノ酸多型について、HBワクチン反応性との関連解析を行った。この結果、DPA1, DPB1それぞれに複数のアミノ酸部位の関連が明らかとなった。
また、従来B型慢性肝炎の罹患しやすさに関してもGWAS研究などにより、HLA-DP領域の遺伝子多型と強い関連があることが繰り返し報告されてきた。このため、この951人において、HLA-DP分子のアミノ酸領域だけではなく、B型肝炎の罹患しやすさとの関連が報告されているアリルや非構造領域のSNPsについても、HBワクチン反応性との関連解析を行った。本研究で同定されたHBワクチンと有意に関連するHLA-DP領域のアリルおよびSNPsは、Kamataniら(Nature Genet 2009)によって大規模GWASで日本人の慢性B型肝炎と関連があることが報告された遺伝要因と全く共通であることが明らかとなった。このことから、HBワクチン反応性に関連する遺伝要因と慢性B型肝炎の罹患しやすさと関連する遺伝要因について、共通の分子機構が働いているものと推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HBワクチン3回接種後の健常若年成人951名について、HLA-DPA1アリル、-DPB1アリル、SNPsのタイピングを施行し、これらの遺伝要因およびそのハプロタイプとHBワクチン反応性を検討し、アミノ酸配列やHLA-DP分子の立体構造について解析した。
さらに、1,000ゲノムプロジェクトなどのデータを用いて、HLA-DP分子多型の人種差の網羅的な検討を行った。

今後の研究の推進方策

新たに発見したHBワクチンと強く関連する遺伝要因が、肝炎においても有用か否かについて検証するための追加実験を行う。
慢性B型肝炎の罹患しやすさとも関連していることが証明できる可能性があり、この知見の臨床的な有用性についても示せることが期待される。

次年度使用額が生じた理由

個人情報保護法等の改正に伴うヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しによって倫理審査等に時間を要したために、今年度の研究の開始は遅くなったが、その後は当初の研究計画に沿って順調に進められている。その結果、日本人951名についての解析によって、Class II HLAのHLA-DP分子がワクチン反応性に関連する分子機構について新たな仮説を提示することができた。また、HBワクチン反応性と関連するHLA-DPの遺伝要因は、HB罹患後の慢性化のしやすさと関連するHLA-DPの遺伝要因と一致することが明らかとなった。両者にはHBs抗原に対する宿主の免疫応答という共通点があり、本研究を進めることで肝炎の予後予測においても有用な知見を得られることが期待できる。
研究期間の延長が認められたので、新たに発見したHBワクチンと強く関連する遺伝要因が、B型肝炎感染後の慢性化においても有用か否かについて検証するための追加実験を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Key HLA-DRB1-DQB1 haplotypes and role of the BTNL2 gene for response to a hepatitis B vaccine.2018

    • 著者名/発表者名
      Nishida N, Sugiyama M, Sawai H, Nishina S, Sakai A, Ohashi J, Khor SS, Kakisaka K, Tsuchiura T, Hino K, Sumazaki R, Takikawa Y, Murata K, Kanda T, Yokosuka O, Tokunaga K, Mizokami M.
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: epub ahead of print ページ: 1

    • DOI

      10.1002/hep.29876

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of vaccine-acquired polyclonal anti-HBs antibodies on the prevention of HBV infection of non-vaccine genotypes.2017

    • 著者名/発表者名
      Kato M, Hamada-Tsutsumi S, Okuse C, Sakai A, Matsumoto N, Sato M, Sato T, Arito M, Omoteyama K, Suematsu N, Okamoto K, Kato T, Itoh F, Sumazaki R, Tanaka Y, Yotsuyanagi H, Kato T, Kurokawa MS.
    • 雑誌名

      J Gastroenterol.

      巻: epub ahead of print ページ: 1

    • DOI

      10.1007/s00535-017-1316-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] B型肝炎ワクチン反応性とHLA多型2017

    • 著者名/発表者名
      酒井愛子
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 263(7) ページ: 603-604

  • [雑誌論文] 母子感染で問題となるウイルス感染症 肝炎ウイルス感染症2017

    • 著者名/発表者名
      酒井愛子 須磨崎亮
    • 雑誌名

      臨床検査

      巻: 61(11) ページ: 1393-1397

  • [雑誌論文] B型肝炎ワクチン定期接種化とワクチン戦略2017

    • 著者名/発表者名
      酒井愛子 須磨崎亮
    • 雑誌名

      保健師ジャーナル

      巻: 73(6) ページ: 481-485

  • [雑誌論文] 特集B型肝炎の現状とワクチン定期接種禍の意義 7.B型肝炎ワクチン定期接種禍の経緯とその意義2017

    • 著者名/発表者名
      酒井愛子 須磨崎亮
    • 雑誌名

      化学療法の領域

      巻: 33(11) ページ: 70-78

  • [学会発表] B型肝炎ワクチン反応性の個人差はクラスII HLA タンパクの構造と関連する2017

    • 著者名/発表者名
      酒井愛子 野口恵美子、北将樹、鈴木寿人、今川和生、田川学、福島紘子、岩淵敦、滝川康裕、須磨崎亮
    • 学会等名
      第21回日本ワクチン学会
  • [学会発表] B型肝炎ワクチン応答性の遺伝的背景とnon-responder 対策2017

    • 著者名/発表者名
      須磨崎亮 酒井愛子
    • 学会等名
      第33回日本DDS学会学術集会 シンポジウム

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi