研究実績の概要 |
初年度は574名の対象者においてClass II HLA(HLA-DPB1, -DQB1, -DRB1)のアリル、アミノ酸多型を検討し、B型肝炎ワクチン反応性と関連するアリルとアミノ酸多型を同定した(Sakai A et al. Vaccine 2017)。 Class II HLA 分子は、α鎖とβ鎖からなるヘテロ二量体であり、2年目は症例数を951例に増やし、上記検討に加えてα鎖のアミノ酸多型についても検討した。この結果DPA1、DPB1それぞれのアリルおよびアミノ酸多型がワクチン反応性と関連していることが明らかとなった。 最終年度は、上記で同定されたアミノ酸多型がHLA-DP分子の立体構造学的にどのような意義をもつのかについて検討した。有意差をもってワクチン反応性と関連するアミノ酸多型が複数みられ、そのほとんどが抗原結合領域の表面に位置していた。また、DPA1、DPB1それぞれで特に強い関連を示したアミノ酸部位は、DPA1の31番目、DPB1の84番目のアミノ酸であり、HLA-DP分子の抗原結合ポケット1に位置していた。またアミノ酸多型により、反応良好群と不良群でポケット1の荷電が異なることが明らかとなった。 当初はHLA-DPのみでは説明しきれないワクチン反応性が、HLA-DQやHLA-DRによって補完されるなど、Class II HLAのDP, DQ, DRをすべて検討すれば説明可能ではないかという仮説をもって検討を開始したが、最終的にHLAの多型のみですべての人の反応性を予測することは不可能であった。Class II HLAはワクチン抗原をCD4陽性T細胞に提示する際に重要であるという免疫機序を合わせて考えると、抗原提示能にHLA多型が関与し、その前後の免疫応答を規定する様々な要因と合わさってB型肝炎ワクチン応答性に寄与していると推測している。
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