研究課題
偽性副甲状腺機能低下症(Pseudohypoparathyroidism 1B, PHP1B)は、腎臓近位尿細管での副甲状腺ホルモン(PTH)への抵抗性により、低カルシウム血症、高リン血症、高PTH血症をきたす疾患である。PHP1B症例のgenomic DNAでは、染色体20番長腕に位置する GNAS locusのメチル化可変領域の広範囲または一部のメチル化異常を示し発症の原因とされている。これまでに、家族例ではGNASまたはその上流のSTX16において母由来の欠失または重複を認め、メチル化異常の原因として報告されている。しかし、PHP1Bの多くは孤発である。本研究の目的は孤発性PHP1Bにおけるメチル化異常の遺伝学的背景を解明することである。これまでに、1)孤発性PHP1B患者25例を収集し、末梢血白血球からgenomic DNA抽出した。2)MS-MLPA法でGNAS locusのメチル化状態を解析した。25例とも広範囲のメチル化異常を示したが、その程度は様々であった。3)片親性ダイソミーを検出するために染色体20番のマイクロサテライト解析を行なった。25例中2例に20番染色体長腕の父性片親性ダイソミー(patUPD20q)を認めた。4)patUPD20q 認めなかった23例についてはSTX16-GNAS locusでのターゲットゲノムシークエンス解析(症例と可能なかぎり両親)を施行している。現在までに、新規変異は検出できていない。微小な父性片親性ダイソミーと微小な欠失の有無を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
症例の収集、メチル化解析、片親性ダイソミーの検出に関しては解析手法は確率できており効率的に行えている。STX16-GNAS locusにおいて新規変異の有無を確認できたことは、当初の研究計画通りである。結果としては、新規変異を同定できなかった。STX16-GNAS locusでのターゲットゲノムシークエンスを施行しているものの、微小な父性片親性ダイソミーと微小な欠失等の構造異常の有無を現時点で解析できていない点が未達成であった。
平成29年度は、本年度施行したSTX16-GNAS locusでのターゲットゲノムシークエンスのデータをさらに解析し、新たな構造異常を同定することを目標としている。その上でメチル化異常の原因が特定できない症例に関しては、全ゲノムシークエンス解析を考慮している。また、本年度実行したメチル化解析おいて、症例によってメチル化異常の程度が様々であることが判明しているが、その理由としては体細胞におけるモザイク現象であることを予測している。メチル化異常が部分的である症例の線維芽細胞のcell lineを確立し、サブクローニングをした上で、メチル化解析を行うことで、モザイク現象を証明することを目指す。
未使額の発生は、ターゲットシークエンスの経費を抑えられたことに起因する。翌年度に新たに予定している全ゲノムシークエンス解析の予算に充てる予定である。
翌年度に新たに予定している全ゲノムシークエンス解析の予算に充てる予定である。
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J Bone Miner Res.
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10.1002/jbmr.3083.