研究課題/領域番号 |
16K19634
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐野 史和 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (00622375)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / ミクログリア / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
1、ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスの病態解析:(1)本モデルマウにおいて、自発のてんかん発作の発症時期は確定できていないが、けいれん重積誘発4週間後において、けいれんの閾値が低下することを見出し、これをけいれん感受性の指標として用いることとした。(2)本モデルマウスの海馬硬化の進展様式とミクログリアの活性化時期を明らかにするため、けいれん重積誘発後、1日・3日・7日・28日後に海馬を摘出し、蛍光免疫組織染色法により海馬組織の経時的推移を検討した。その結果、本マウスでは、けいれん重積1-7日後の早期にミクログリアが活性化し、7-28日後にかけて慢性進行性にアストロサイトが活性化することを見出した。 2、活性化ミクログリアの表現型解析:けいれん重積後に惹起される活性化ミクログリアによる、神経炎症過程の程度および持続期間を解明するため、炎症性サイトカインであるIL-1β, TNF-αのmRNAの発現量変化を定量RT-PCR法を用いて定量解析した。その結果、けいれん重積後の海馬組織に存在するミクログリアにおいて、IL-1β, TNF-α(炎症性サイトカイン)のmRNAが、24時間以内に発現上昇することも確認した。また、これは海馬組織全体から抽出したmRNAにおいても同様の傾向であった。 3、ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスのてんかん発症予防:平成29年度の計画を一部前倒し、初回けいれん重積後に、ミノサイクリン20mg/kg/日を連日腹腔内投与しミクログリアの活性化を抑制することで、けいれん重積誘発4週間後における、けいれんの閾値の低下が予防できることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた、1)ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスの病態解析について、長時間脳波モニタリングによる、自発発作の確認には至らなかったが、初回けいれん重積後に、けいれんの閾値が低下することを確認し、これを新たな指標とすることとした。また、けいれん重積誘発後の海馬組織の経時的推移の検討に関しては、概ね予定通りに実験を遂行することができた。2)活性化ミクログリアの表現型解析については、当初、海馬組織全体から抽出したmRNAのみを解析の対象としていたが、海馬組織に存在するミクログリアを分離し、mRNAを抽出し解析することができたため、当初計画以上の進展が見られた。3)ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスのてんかん発症予防に関しては、平成29年度の計画を一部前倒し、初回けいれん重積後に、ミノサイクリン20mg/kg/日を連日腹腔内投与しミクログリアの活性化を抑制することで、けいれん重積誘発4週間後における、けいれんの閾値の低下が予防できることも見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、 1、ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスのてんかん発症予防効果を明らかにするために、初年度で明らかとなった活性化ミクログリアの出現時期に、ミクログリアを抑制することで上記モデルマウスの側頭葉てんかん発症が予防できるかを明らかにする。具体的には以下の実験を予定している。本モデルマウスの病理組織学的変化の経時的推移の解明:ミノサイクリン20mg/kg/日を連日腹腔内投与しを投与し、海馬硬化の進展が抑制されるかについて、初年度と同様に蛍光免疫組織染色を用いて定量評価する。 2、活性化ミクログリアの表現型解析:けいれん重積誘発後に、ミノサイクリン20mg/kg/日を連日腹腔内投与することで、神経炎症過程が抑制されるのかについて、炎症性サイトカインであるIL-1β, TNF-αとの発現量変化を定量RT-PCR法を用いて確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長時間脳波モニタリングの実験が、当初計画通りに進展しなかったことから、消耗品を使用しなかったため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、長時間脳波モニタリングの実験を予定しており、消耗品として使用する予定である。
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