研究実績の概要 |
フィラデルフィア染色体陽性急性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL)は、Imatinib(IM)の部分的な効果を認めるものの、未だに予後不良な疾患である。Lenalidomide(LEN)は、多発性骨髄腫などの血液腫瘍に対する抗腫瘍効果を持つが、ALLを対象とした報告はない。本研究では、LENのPh+ALLに対する抗腫瘍効果をメカニズムも含め判定し、新規治療法樹立を目指すことを目的とする。 これまでに、研究計画に基づいて、1,ALL細胞株に対する抗腫瘍効果の確認、2,抗腫瘍効果のメカニズムの探索、3,IKZFとの関連、4,白血病モデルマウスに対する効果確認の4点に対して研究を進めてきた。1,一部のPh+ALL細胞株ではLENの存在下で細胞活性の低下や、細胞死が誘導され、それらの効果はIMの共存在下でより増強された。2,LEN、IMの存在下での細胞死誘導メカニズムとして、アポトーシス誘導の主因子であるcaspase-3の活性化が認められ、その上流因子であるbimの発現上昇を認めた。3,IKZF1はいくつかのアイソフォームをもつが、LENの存在下では、IK6を除いたすべてのアイソフォームが分解されていた。IKZF3はLENにより代償的に発現の上昇がみられ、メカニズムにIKZF1の関連が示唆された。4,NOD/SCID/γnullマウスを用いてPh+ALL細胞の生着実験と、治療モデル実験を行った。移植後のControl群の生着率は29.7%であったが、LEN、IMA共投与マウスでは0.3%著明に低下していた。また、治療モデル実験では、移植後30日の時点で、control群の生存率は0%である一方、共投与マウスでは全例生存しており、50日の時点でも約60%が生存していた。 以上からLEN、IMのPh+ALL細胞に対する抗腫瘍効果は明らかであり、新規治療法の確立につながる可能性が強く期待される。
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