研究実績の概要 |
フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL)は,チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)により治療成績の改善が見込まれるものの,未だ予後不良な疾患である.レナリドミド(LEN)は,多発性骨髄腫(MM)などの血液腫瘍に対する効果が示されたが,ALLを対象とした報告はない.本研究では,LENのPh+ALLに対する抗腫瘍効果を判定し,新規治療法樹立を目指すことを目的とした. 当初,①ALL細胞株を用いた抗腫瘍効果の確認,②抗腫瘍効果のメカニズムの探索,③IKZF遺伝子変異との関連,④TKI耐性Ph+ALLに対する効果の検討,⑤Ph+ALL白血病モデルマウスに対する効果の確認を研究計画として掲げ,①,②,⑤に関しては一定の成果を昨年度に報告している.③IKZF遺伝子変異に関して,13の細胞株に対して変異型のタイピングを行った結果,77%で変異を認めた.これらの変異とLENの感受性との関連は明らかでなかった.④TKIであるイマチニブ(IM)存在下で長期培養することで,耐性を獲得した細胞株を用いた.LENやIMの単独,または共存在下で細胞死は誘導されなかったが,第2世代型のTKIであるポナチニブに対して細胞は感受性を示し,共存在下では,IM感受性細胞と同等の細胞死誘導を認めた. 昨年度新たに掲げた推進方策として,ALLの重要薬剤であり,かつMMに対してLENと併用されているデキサメタゾン(Dex)と,LEN,IMとの計3剤での相乗効果を検討した.LEN,IMの2剤併用では,細胞死比率は約70%であったのに対し,3剤併用では90%以上となり,ほとんどの細胞が死滅していた.④に示したIM耐性細胞株に対しても同等の効果が確認された.現在,⑤に関して3剤併用での検討を行っている. これらの3剤は全て経口剤であり,臨床応用が可能であれば,Ph+ALL患者の大幅なQOL改善が期待される.
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