研究課題/領域番号 |
16K19638
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳥居 ゆか 名古屋大学, 医学系研究科, 学振特別研究員(RPD) (00770281)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EBV / インフラマソーム / 単球 |
研究実績の概要 |
(1)ヒト単球由来細胞株THP-1におけるEBV感染 ヒト単球由来細胞株であるTHP-1を用いてEBVが感染するかまず検討した。感染するとGFP陽性となるEBVを産生するEBV陽性上皮由来細胞株(AGS-GFP-EBV)の培養上清を濃縮し、ウイルス液として用いた。あらかじめBリンパ球由来の細胞株であるBJABを用いて上記ウイルス液とインキュベートし、48時間後、フローサイトメトリーでGFP陽性細胞(EBV感染細胞)をカウントして感染率を算出し、感染力価( Green BJAB Unit )を設定した。6×10^5 GBUの力価のウイルス上清を用いてTHP-1とインキュベートしたところ、48時間後に1.76%ほど感染を認めることがわかった。 (2)THP-1におけるインフラマソーム応答 THP-1におけるインフラマソーム活性を調べるため、EBV感染後の培養上清のIL-1βをELISAにて測定した。結果、感染24時間から48時間後にIL-1βの産生が認められた。細胞中のcaspase-1をイムノブロットで確認したところ、感染6時間後から活性化caspase-1の発現上昇をみとめた。インフラマソームを構成するパターン認識受容体 (PRR)のうち、NLRP3 (NOD-like receptor 3)、IFI16(Gamma-interferon-inducible protein 16)、AIM2 ( Absent in Melanoma 2) についてイムノブロットで検討した。結果AIM2のみ、発現上昇をみとめた。mRNAの解析では感染6時間後にIL-1β mRNAの発現上昇をみとめた。また、PRRのうち、AIM2のみが、感染6時間後にmRNA発現が上昇していた。以上から、THP-1のEBV感染に対するインフラマソーム応答にはAIM2が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト単球細胞株であるTHP-1にEBVが感染するか確かめるために様々な条件で検討した結果、超遠心(4℃、1,6000G、90分)で培養上清を300倍に濃縮したウイルス液を用いるとインキュベート48時間後に感染細胞を確認できた。感染細胞は共焦点顕微鏡で確認し、フローサイトメトリーでGFP陽性細胞をカウントして感染率を算出した。EBVはBリンパ球の細胞表面にあるCD21に結合して侵入することが知られており、THP-1でもCD21が発現しているか、フローサイトメトリーで解析したところ、THP-1はCD21を発現していないことが分かった。CD21非発現細胞では、CD35とHLA-DR共発現下においてEBVが感染することが報告されており、CD35とHLA-DRの発現を調べたところ、それぞれ41.5%、39%発現していた。 次に、THP-1のEBV感染によるインフラマソーム応答について検討したところEBV感染24時間後から上清中にIL-1βが放出されることが分かった。さらに、感染6時間後から活性化したcaspas-1の発現が上昇していた。Caspase-1阻害薬を投与下に同様の実験を行ったところ、培養上清中のIL-1βは有意に減少した。以上から、THP-1のEBV感染時におけるIL-1βの産生はcaspase-1依存性であることが分かった。Caspas-1の活性はインフラマソーム複合体により起こっていると考えられ、インフラマソームを構成することが知られているパターン認識受容体のうち、AIM2、NLRP3、IFI16について検討した。するとEBV感染後THP-1細胞ではAIM2のみ発現が上昇していることがイムノブロットで示された。以上から、THP-1におけるEBV感染時のインフラマソーム応答にはAIM2が関与していると考えられた
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、濃縮培養上清でEBVが感染し、インフラマソーム応答を起こすことが考えられたが、濃縮培養上清には細胞断片なども含まれるために、それらがインフラマソーム応答を起こしている可能性もある。ウイルス粒子を除去した上清とインキュベートしてインフラマソーム応答がみられるかについて検討する。 ヒト単球由来細胞株であるTHP-1においてEBV感染とEBV感染時のインフラマソーム応答が確認できたので、初代ヒト単球細胞を用いて同様に検討する。単一ドナー由来のCD14陽性ヒト単球細胞をこれまでと同じ条件下でEBVとインキュベートし、48時間後に共焦点顕微鏡やフローサイトメトリーによるGFP陽性細胞の解析し、感染するか検討する。また、培養上清中のIL-1βの測定をELISAで測定し、イムノブロット及びRTPCRによる細胞中のインフラマソーム関連分子の解析を行う。 THP-1の実験から、EBV感染時のインフラマソーム応答にはAIM2が関与していると考えられた。そこで、AIM2をノックダウンしてEBV感染時のインフラマソーム応答について検討する。AIM2のノックダウンにはsiRNA導入法を行う。本法でノックダウンを確認後、EBVウイルス液とインキュベートして経時的なIL-1β産生やインフラマソーム関連分子の発現について解析する。 ヒト化マウスを用いてin VivoでのEBV感染時におけるインフラマソーム応答について検討する。免疫不全マウス(NOGマウス)にヒト臍帯血幹細胞を注入し、ヒト血球細胞の生着をフローサイトメトリーで確認できたらEBVをマウスに感染させる。感染数日後、マウスの血液を採取して、IL-βやIL-18をELISA法で測定し、対照マウスとサイトカイン量を比較する。また、マウスにおける、インフラマソーム活性を、PCRやウエスタンブロッティング等により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入予定していたウェスタンブロット関連の物品が、想定より安く購入でき、数も少なくて済んだため次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
この予算は次年度、単球以外のヒト白血球の分離およびインフラマソーム応答の実験に使用する予定である。
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