研究課題
神経芽腫は小児の代表的な難治性固形がんで、高リスク患者においては半数以上が再発し、長期生存率は40%に満たない。本研究では、再発の原因となり、治療抵抗性を示すがん幹細胞の増殖・分化における分子機構の解明を目的とし、細胞内小胞輸送の活性制御機構に注目した。申請者は、スフェアで著しく発現の変化するDENN ドメイン蛋白質(DENN/RabGEFs)のメンバーであるDENND2A が、神経芽腫の発症・進展に関与することを明らかにしてきた。そこで本研究では、DENND2A による神経芽腫の発症・進展の分子機構の解明を試みている。本年度は既にDENND2Aにより活性化されることが報告されているRabファミリー低分子量G蛋白質であるRab9Bについて、過剰発現細胞及び発現抑制細胞を用いてスフェア形成能を検討した。その結果、過剰発現細胞でスフェア形成能が低下し、発現抑制細胞でスフェア形成能が亢進することを明らかにした。また、神経芽腫患者データベースであるR2(http://r2.amc.nl)においても、Rab9B高発現の患者で全生存率が有意に高いことを確認した。これまで申請者らは、DENND2A、Rab9Bの過剰発現・発現抑制細胞においてコロニー形成能・腫瘍形成能が変化することを明らかにしており、これらの結果と合わせて、DENND2A, Rab9Bについて、その発現が神経芽腫の進展に関与することを明らかにした。またRab9Bについて、GTP結合型変異体・GDP結合型変異体を作成し、それらを過剰発現した神経芽腫細胞株を樹立した。現在これらの細胞株を用いて遺伝子発現解析を進めている。またその後、Rab9B以外にDENND2Aに結合する他のRabの有無を検索し、上流/下流シグナルを同定する。
2: おおむね順調に進展している
本研究はDENND2Aとそれに関連するRabファミリー低分子量G蛋白質に注目して神経芽腫の発症・進展の分子機構の解明を進めている。DENND2A・Rab9Bによる発生・分化の制御機構の解析をおおむね期待通りに出来ている。
引き続きDENND2Aによる神経芽腫がん幹細胞の発生・分化機構を明らかにするべく、上流/下流シグナルの同定と共に患者検体における発現・機能解析を進めていく。
昨年度は予定していた実験を一部開始出来ず、一般試薬及び培養試薬の使用量が当初計画を若干下回ってしまった。
次年度はDENND2Aの上流/下流シグナルの同定に尽力する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
ONCOLOGY LETTERS
巻: 12 ページ: 1119-1123
10.3892/ol.2016.4682