本研究は、遷延する鶏卵アレルギー児に対する経口免疫療法の治療前後における、患者血清中の抗原特異的免疫グロブリン各アイソザイムの産生パターンならびに抗原親和性の変化を解析することで、それらの変化の意義ならびに経口免疫療法の奏功機序の解明を目的としたものである。 抗原特異的免疫グロブリンの経時変化に関する検討では、抗原特異的IgEは、増量期と維持期を通して持続的に低下する傾向を示した。IgG1、IgG3、IgAは増量期に治療前よりも有意に上昇し、維持期には持続的に低下するパターンを、IgG2およびIgG4は、増量期と維持期を通して持続的に上昇するパターンを示した。治療効果による比較検討において、経過良好群では治療前のIgA値および増量期終了時の IgG1上昇率が有意に高値であった。 オボムコイド添加競合阻害法による抗原特異的免疫グロブリンの抗原親和性の検討では、増量期終了時にはオボムコイドIgEの抗原親和性が有意に低下していた。治療効果による比較検討では、経過良好群では増量期終了時のオボムコイドIgEの抗原親和性が低下していたのに対し、経過不良群では治療前後での抗原親和性の変化に乏しく、高親和性を維持する傾向を認めた。また、オボムコイドIgG1、IgG4についても、治療前後でその抗原親和性に変化を認めた。 以上より、治療前の抗原特異的IgA値と、増量期終了時のIgG1の増加応答性は、経口免疫療法の治療早期における予後予測を可能にするバイオマーカーとなりうることが示唆された。また、経口免疫療法のよる抗原特異的免疫グロブリンの抗原親和性の変化が、その奏功機序に関与している可能性が示唆された。
|