未知の内因性Nod1リガンドが存在し動脈硬化の進展に関与するという仮説を証明するため、無菌環境という外因性NOD1リガンドのない状態において、Apoe KOマウスとApo・Nod1 DKOマウスの動脈硬化病変の比較実験を継続した。前期では無菌状態飼育マウスが20週の飼育期間の間で突然死することが多く各群2匹しか評価ができなかったが、後期では、各群3-4匹追加できた。その結果、無菌環境においてもNod1 KOにより動脈硬化病変(プラーク)の有意な軽減効果が見られることを確認できた。この結果は、細菌のペプチドグリカンに由来するとされる従来の外因性Nod1リガンド以外の、内因性Nod1リガンドが存在すること、そしてその内因性リガンドが動脈硬化の進展に関与することを示唆する。 この内因性リガンドの検索のため、NOD1レポーター細胞を用いて、通常飼育下のApoe KOマウスから組織を摘出し、組織をホモジナイズして酢酸エチルで脂溶性、中間層、水溶性成分を分離した後、濃縮を行い、NOD1レポーター細胞で活性を測定した。前期では、いずれの抽出層の反応も、Null細胞における反応と有意な差はなく、脱塩の過程を経ると感度が低下することがわかった。組織中のリガンド量がHEK-Blue mNOD1 cellの感度以下である可能性を考慮し、組織量を増やし同様の分離・濃縮を行ったが、やはりいずれの抽出層の反応も、Null細胞における反応と有意な差はなく、リガンド量、および抽出法の効率の問題と考えられた。 以上の結果からは、ごく微量の内因性リガンドの慢性的な刺激が動脈硬化の進展に関与する可能性が示唆される。
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