本研究は、GM1ガングリオシドーシス患者iPS細胞を用いて発見した新規治療薬候補の有効性を、本患者ニューロンを用いたin vitro系、および本疾患モデルマウス(BKOマウス)を用いたin vivo系によって評価するものである。 本年度は、前年度に有効性を見出した候補化合物の作用メカニズムについて焦点を当ててて解析した。 まず始めに、候補化合物の処理あり・なしでGM1ガングリオシドの生合成・分解にかかわる酵素群を網羅的にmRNAレベルで発現量を調べたところ、NEU1およびβ-GLUとよばれる分解酵素の発現が候補化合物の処理によって増加することが分かった。さらにNEU1およびβ-GLUの酵素活性を測定したところ、候補化合物の処理によって増加することが分かった。このことから、候補化合物の作用メカニズムのひとつとして、ガングリオシド系の分解経路の酵素であるNEU1およびβ-GLUを増加させることによって、GM1ガングリオシドを減少させていることが分かった。 さらに、GM1ガングリオシドーシスを含む多くのライソゾーム病で報告のあるオートファジーの異常について、候補化合物の処理あり・なしによって調べたところ、候補化合物の処理によってオートファジーが促進されていることも分かった。 これらのことから、有効性を見出した候補化合物は、ガングリオシド系の分解経路の酵素の発現上昇およびオートファジーの促進という2つのメカニズムを介して作用をしているということが示唆された。
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