(具体的な内容) 小児慢性腎疾患において、特発性ステロイド感受性ネフローゼ症候群(ISSNS)は重要な位置を占めており、同疾患の病態解明に寄与する知見を得て、発症予防、及び、治療薬の開発を促進させることを目的として本研究を開始した。この目的のために、ISSNS関連因子を同定し、同時に、標的傷害組織部位を確認することを試みる。我々が先の研究でISSNSのdeep proteinとして同定した、ISSNSの病因候補一次質量ペプチドイオン3個に対し、ペプチドシークエンスタグ法を用い、病因候補蛋白質を同定する。また、同定した病因候補蛋白質を小児ISSNS患児の血清中に確認し、蛋白尿、低アルブミン血症そして全身性浮腫といったネフローゼの病勢に関与する因子との関連を調べる。
平成29年度は、平成28年度に得た3個のペプチドイオンをタンデム質量解析し、分解して得られた生成イオンのピーク間の質量差を測定し、各ペプチドイオンのアミノ酸配列情報を得た。平成30年度は、これにトリプシン処理した時の、ペプチド末端のアミノ酸の種類とその質量のデータに対し、マスコットサーチを行い、同フラクションに含まれるポリペプチドイオンを同定し、同定物質が、小児ISSNSに特異的か、統計学的解析を行った。現在投稿準備中である。 (意義)Apolipoprotein AⅡとApolipoprotein CⅠに加え、もう一つの病因候補蛋白質を同定することができ、いまだ不明であるISSNSの病態の解明を進めていく新たな研究の起点となる可能性がある。
|